第36回目の心ぴくコーナーです。
今回は正月に少し休めたので11本の映画を見ることが出来ました。
「ALWAYS 三丁目の夕日」「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」「Mr.&Mrs.スミス」「ミート・ザ・ペアレンツ2」「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」「ザスーラ」「ロード・オブ・ウォー」「キング・コング」「男たちの大和 YMATO」「チキン・リトル」「ダウン・イン・ザ・バレー」です。
「ALWAYS 三丁目の夕日」作品に感情移入するまで時間がかかった映画。最初の方の濃い漫画的演出が後半になって薄くなっていき、やっと慣れてくる。ウームこれが今大絶賛の日本映画か。
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」シリーズ全部子どもと一緒に見ているがやっぱりノレナイ。
「Mr.&Mrs.スミス」期待していなかったがナカナカ面白かった。60年代の犯罪コメディーの匂いを感じたのは私だけだろうか?
「ミート・ザ・ペアレンツ2」深夜テレビでやっていた1がなかなか面白かったので劇場まで足を運んだ。1ほどではなかった。
「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」<ドッグヴィル>の監督ラース・フォン・トリアーの脚本と言うことにひかれて行った映画。どうもパッとしなかった。
「ザスーラ」子どもと行った。<ジュマンジ>のほうが面白かった。
「男たちの大和 YMATO」前半は軍隊の描き方が英雄話のようでリアリティーを感じなく、席を立とうかと思ったが後半俄然面白くなり70年代の日本の大作映画のパワーが感じられ懐かしかった。ただ欲を言えば傑作<戦争と人間>並みの腹の据わり方で撮ってほしかった。
「チキン・リトル」
子どもと観た。ディズニーが作ったピクサー作品のような映画。それ以上でもそれ以下でもなし。
「ダウン・イン・ザ・バレー」お気に入りの俳優エドワード・ノートン(「25時」「レッド・ドラゴン」)主演ということで観に行った。最初から最後まで主人公に感情移入できなかった。異常なのは良いが、人物描写がそれだけでは、薄っぺらい印象がしてしまう。監督は大傑作「タクシードライバー」みたいな映画でも撮りたかったのだろうか?それにしては深みがないなあ・・・。
と言うわけで第36回目の心ぴく映画は「ロード・オブ・ウォー」「キング・コング」
の2本です。
「ロード・オブ・ウォー」傑作です。これこそ70年代のアメリカン・ニューシネマをこよなく愛する私が求めていた映画です。
鋭い政治批判、社会批判を娯楽というオブラートで包み、見終わった後で深いものを心に残す映画。まさにアメリカン・ニューシネマの復活です。
この映画の傑作たる所以は、そのリアリズムにあります。人物描写のリアリズムです。
陳腐な娯楽映画のように、単純な善悪で人物を書き分けていなくて、あらゆる側面の中で変わっていく人間の姿をしっかりと捉えているのです。主人公とその弟の生き様が、人間の業の深さを的確に表していて素晴らしく、感動しました。
主人公の武器商人役は、ニコラス・ケイジでなくては駄目だと思うほどはまっていて、この役者の上手さを再確認させられます。
大げさな演技などせず淡々と人間の弱さ、したたかさ、残酷さを表現する演技力には他の男性俳優の追随を許さない風格さえ見えるのです。
これは脚本・監督のうまさにも言えることで、腹が据わったいい映画とはこういうものだというお手本にもなりそうなほどです。
アメリカ人の脚本・監督作でありながらアメリカ資本が全く入ってないことに驚かされましたが、それがこの映画を稀有なものにしています。
国の思想から全くの自由というものを勝ち取っているのです。だから批判精神は半端じゃありません。主人公が武器を売り歩く戦場の悲惨な姿をキチンと見せた後で、本当の
真犯人を告発するのです。悲劇を世界にばら撒くのは、戦争を広める張本人は誰かという事をしっかりと画面に向かって主人公のニコラス・ケイジに語らせているのです。
これを見て私は本当に嬉しくなりました。アメリカ人監督達が目覚めつつあると、70年代のアメリカン・ニューシネマのように、権力の腐敗を普通の人々にわかりやすい娯楽映画として発信する。そんな制作活動が盛んになりつつあるんだなと。
2006年はそんな気骨があるアメリカ映画が数多く作られるという嬉しい確信を私に与えてくれた記念碑的傑作。それがこの「ロード・オブ・ウォー」です。
主人公がはっきりと告発する真犯人を知りたい人は是非とも劇場に足を運んでください。
この映画が日本で作られる状況が来たら日本の未来が明るいものになる。そんな踏み絵になるような映画だと思います。
「キング・コング」単純に楽しめました。
3時間がまったく長く感じられませんでした。そんな映画は久しぶりです。
さすがはピーター・ジャクソン。きわもの映画に品格を与える名監督という私の勝手な評価はどうやら間違ってはなかったようです。どこかの評論家はコングが出てくるまで長すぎると書いていましたが私はそうは思いません。
その時のしっかりした人物描写があるおかげで、コングが出てきた後も人間に感情移入できて陳腐な怪獣バトル物にはならず踏み止まっているのです。
私が映画の好き嫌いを決める基準の一つは、忘れられないシーンがあるということです。
この映画でもそんなシーンがいくつかありました。
船が髑髏島の岸壁に激突しそうになるシーン、妖虫の群れが船員を襲うシーン、夕日のシーン、その中でも私が一番気に入ったシーンは、コングがクロロホルムで眠らされそうになりながらもヒロインをもとめて小船に襲いかかる海岸の洞穴のシーンです。
何故そんなに好きかと聞かれればハッキリとはしませんが、昔、何かで見た冒険小説の挿絵そのもののような構図が私の琴線に触れたのかもしれません。
そうです。この映画は幼い時から円谷版怪獣映画が好きでアメリカのSFドラマや、イギリスのハマープロのホラー・冒険・SF映画にハマっていた私にとってプレゼントのような映画だったのです。ありがとうピーター・ジャクソン監督。とっても楽しめました。
お薦めです。面白いですよ。
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