心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第36回 <ロード・オブ・ウォー><キング・コング> 2006.01.18

第35回 <イン・ハー・シューズ> 2005.12.03

第34回 <惜しい4本とどうでもいい1本> 2005.11.01

第33回 <愛にいてのキンゼイ・レポート> 2005.09.26

第32回 <スターウォーズ・エピソード3/シスの復讐> 2005.08.31

第31回 <ホステージ> 2005.07.21

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第26回〜第30回

第21回〜第25回 第17回〜第20回 第13回〜第16回

第9回〜第12回 第5回〜第8回 第1回〜第4回

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<ロード・オブ・ウォー><キング・コング>

ロード・オブ・ウォー、キング・コング

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第36回目の心ぴくコーナーです。
今回は正月に少し休めたので11本の映画を見ることが出来ました。
「ALWAYS 三丁目の夕日」「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」「Mr.&Mrs.スミス」「ミート・ザ・ペアレンツ2」「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」「ザスーラ」「ロード・オブ・ウォー」「キング・コング」「男たちの大和 YMATO」「チキン・リトル」「ダウン・イン・ザ・バレー」です。

「ALWAYS 三丁目の夕日」作品に感情移入するまで時間がかかった映画。最初の方の濃い漫画的演出が後半になって薄くなっていき、やっと慣れてくる。ウームこれが今大絶賛の日本映画か。
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」シリーズ全部子どもと一緒に見ているがやっぱりノレナイ。
「Mr.&Mrs.スミス」期待していなかったがナカナカ面白かった。60年代の犯罪コメディーの匂いを感じたのは私だけだろうか?
「ミート・ザ・ペアレンツ2」深夜テレビでやっていた1がなかなか面白かったので劇場まで足を運んだ。1ほどではなかった。
「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」<ドッグヴィル>の監督ラース・フォン・トリアーの脚本と言うことにひかれて行った映画。どうもパッとしなかった。
「ザスーラ」子どもと行った。<ジュマンジ>のほうが面白かった。
「男たちの大和 YMATO」前半は軍隊の描き方が英雄話のようでリアリティーを感じなく、席を立とうかと思ったが後半俄然面白くなり70年代の日本の大作映画のパワーが感じられ懐かしかった。ただ欲を言えば傑作<戦争と人間>並みの腹の据わり方で撮ってほしかった。
「チキン・リトル」
子どもと観た。ディズニーが作ったピクサー作品のような映画。それ以上でもそれ以下でもなし。
「ダウン・イン・ザ・バレー」お気に入りの俳優エドワード・ノートン(「25時」「レッド・ドラゴン」)主演ということで観に行った。最初から最後まで主人公に感情移入できなかった。異常なのは良いが、人物描写がそれだけでは、薄っぺらい印象がしてしまう。監督は大傑作「タクシードライバー」みたいな映画でも撮りたかったのだろうか?それにしては深みがないなあ・・・。

と言うわけで第36回目の心ぴく映画は「ロード・オブ・ウォー」「キング・コング」
の2本です。

「ロード・オブ・ウォー」傑作です。これこそ70年代のアメリカン・ニューシネマをこよなく愛する私が求めていた映画です。
鋭い政治批判、社会批判を娯楽というオブラートで包み、見終わった後で深いものを心に残す映画。まさにアメリカン・ニューシネマの復活です。
この映画の傑作たる所以は、そのリアリズムにあります。人物描写のリアリズムです。
陳腐な娯楽映画のように、単純な善悪で人物を書き分けていなくて、あらゆる側面の中で変わっていく人間の姿をしっかりと捉えているのです。主人公とその弟の生き様が、人間の業の深さを的確に表していて素晴らしく、感動しました。
主人公の武器商人役は、ニコラス・ケイジでなくては駄目だと思うほどはまっていて、この役者の上手さを再確認させられます。
大げさな演技などせず淡々と人間の弱さ、したたかさ、残酷さを表現する演技力には他の男性俳優の追随を許さない風格さえ見えるのです。
これは脚本・監督のうまさにも言えることで、腹が据わったいい映画とはこういうものだというお手本にもなりそうなほどです。
アメリカ人の脚本・監督作でありながらアメリカ資本が全く入ってないことに驚かされましたが、それがこの映画を稀有なものにしています。
国の思想から全くの自由というものを勝ち取っているのです。だから批判精神は半端じゃありません。主人公が武器を売り歩く戦場の悲惨な姿をキチンと見せた後で、本当の
真犯人を告発するのです。悲劇を世界にばら撒くのは、戦争を広める張本人は誰かという事をしっかりと画面に向かって主人公のニコラス・ケイジに語らせているのです。
これを見て私は本当に嬉しくなりました。アメリカ人監督達が目覚めつつあると、70年代のアメリカン・ニューシネマのように、権力の腐敗を普通の人々にわかりやすい娯楽映画として発信する。そんな制作活動が盛んになりつつあるんだなと。
2006年はそんな気骨があるアメリカ映画が数多く作られるという嬉しい確信を私に与えてくれた記念碑的傑作。それがこの「ロード・オブ・ウォー」です。
主人公がはっきりと告発する真犯人を知りたい人は是非とも劇場に足を運んでください。
この映画が日本で作られる状況が来たら日本の未来が明るいものになる。そんな踏み絵になるような映画だと思います。

「キング・コング」単純に楽しめました。
3時間がまったく長く感じられませんでした。そんな映画は久しぶりです。
さすがはピーター・ジャクソン。きわもの映画に品格を与える名監督という私の勝手な評価はどうやら間違ってはなかったようです。どこかの評論家はコングが出てくるまで長すぎると書いていましたが私はそうは思いません。
その時のしっかりした人物描写があるおかげで、コングが出てきた後も人間に感情移入できて陳腐な怪獣バトル物にはならず踏み止まっているのです。
私が映画の好き嫌いを決める基準の一つは、忘れられないシーンがあるということです。
この映画でもそんなシーンがいくつかありました。
船が髑髏島の岸壁に激突しそうになるシーン、妖虫の群れが船員を襲うシーン、夕日のシーン、その中でも私が一番気に入ったシーンは、コングがクロロホルムで眠らされそうになりながらもヒロインをもとめて小船に襲いかかる海岸の洞穴のシーンです。
何故そんなに好きかと聞かれればハッキリとはしませんが、昔、何かで見た冒険小説の挿絵そのもののような構図が私の琴線に触れたのかもしれません。
そうです。この映画は幼い時から円谷版怪獣映画が好きでアメリカのSFドラマや、イギリスのハマープロのホラー・冒険・SF映画にハマっていた私にとってプレゼントのような映画だったのです。ありがとうピーター・ジャクソン監督。とっても楽しめました。
お薦めです。面白いですよ。

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<イン・ハー・シューズ>

イン・ハー・シューズ

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今月は「親切なクムジャさん」「イン・ハー・シューズ」「コープス・ブライド」「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」「ブラザーズ・グリム」「ダーク・ウォーター」「ミリオンズ」「ソウ2」と8本の映画を見ました。

「親切なクムジャさん」刺激に次ぐ刺激で推し進めていく力技の韓国映画。傑作オールドボーイの監督作だが後半強烈な場面が展開されるにしては期待したほどには盛り上がらなかった印象。ブラックコメディーとしてみれば納得がいくかも・・。
「コープス・ブライド」ハマープロのホラー映画に、幼い頃ハマッタ私としては非常に楽しめました。是非次はティム・バートン監督に実写版を撮ってもらいたいものです。テレビ的映画に慣れたお客はヒクと思いますが。
「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」70年代アクション映画風に作ってはいるが、とんでもない凡作。せめてリアルなのか荒唐無稽なのかスタンスを決めてから撮り始めてほしい。
「ブラザーズ・グリム」結構好きなテリー・ギリアム監督の作品。期待していただけに多少肩透かしを食らった感じの映画。いつもの作品らしくもっとシニカルな話を予想していたのに。次回作に期待。
「ダーク・ウォーター」原作の日本映画は見ていませんが結構忠実に映画化したのだろうと思います。ジャパニーズホラー特有の思わせぶりな演出と恨み節、最初は新鮮だったのに、もういいやという感じの今日この頃。ラストも全く盛り上がりませんでした。
「ミリオンズ」傑作、トレインス・ポッティングのダニーボイル監督の最新作。正直そのほかの作品はイマイチだったがコレは中々いけます。主演の男の子がとにかく良い。存在だけで天使に愛される事が素直にこちらに伝わってきます。
「ソウ2」1より娯楽作として、はるかにデキが良い。最後まで目を釘ズケにさせるが、やはりラストが舌足らずな感じが否めない。人間を記号みたいに扱っているからなのだろうか?もっと感情移入できる作りになっていればラストの恐怖は凄まじいものになっていたのに・・。惜しい。

と言うわけで第35回目の心ぴくコーナーは「イン・ハー・シューズ」です。
とにかく嬉しくなっちゃいました。カーティス・ハンソン監督が、やはり私の期待を裏切らない名職人監督だったからです。これまでもサスペンスの<ゆりかごを揺らす手><激流>ノワールの傑作<LAコンフィデンシャル>青春映画<8Mile>とはずれが無い数少ない監督だとは思っていましたが、この映画を見てそれが確信へと変わりました。
男性が見ても面白い。いや、誰でも楽しめて感動できるアメリカの姉妹のお話です。恋愛下手な姉と奔放な妹、普通のアメリカ映画なら女性客に夢を集めるために、2人が仲たがいしながらも女性の夢である事業でのサクセスか、素晴らしい恋人とのハッピーエンドかで幕を下げると思いますが、この映画はそうはいきません。カーティス・ハンソンは最初からそんな映画を作ろうとは思っていないのです。
彼の映画がどれも娯楽映画なのに深く心に残るのは人間を記号として扱っていないからです。
たとえば、よくある恋愛映画の登場人物は最初から最後まで恋愛のことばかり考え行動します。アクション映画の登場人物がたえずアクションシーンを演出するために行動するのと同じです。
こうなると記号と変わりません。漫画と同じだともいえるでしょう。普通の人間はそんな行動をとれるわけが無いのです。たしかに近年の映画は漫画の映画化が多いせいか、まるで漫画の行動パターンで動く主人公ばかりになったような気がします。
純情な人はひたすら純情で、強い人はどんな状況でも強い。コレも記号です。性格が記号化しているのです。
たしかに分かりやすいに越したことはありませんが、そんなに俳優が二次元の住人っぽい演技をする映画ばかりを見て面白いでしょうか?アニメを見たほうが良いのではないでしょうか?
カーティス・ハンソン監督作に出てくる登場人物は人間ばかりです。
ちょっとしたことで心変わりをして悲しみ、傷つき、そして笑います。
サスペンス・ノワール・青春・女性。どのジャンルの映画の登場人物もそうです。絶えず心が動いているのです。ストーリーの中で繊細にそれを追っていきます。
そこで人間が形づくられていくのです。一筋縄で語れない普通の人間の描写が見事です。だからジャンルを超えて性差関係なく感情移入できるのです。
真面目な姉の靴収集癖。奔放な妹の難読症。父の再婚相手。縁を切っていた祖母の存在。
老人介護施設の老教授。母の死の秘密。その全てのエピソードが無理なく妹と姉の人間性を映し出す鏡となっています。押し付けの感動などなく、無理な笑いもなく、それでも笑わせ泣かせてくれます。名職人監督が撮った娯楽作であり上質の人間ドラマである「イン・ハー・シューズ」万人にお薦めの傑作です。

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<惜しい4本とどうでもいい1本>

惜しい4本とどうでもいい1本

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第34回の心ぴくは、仕事関係で雑多な用事が重なったせいで5本しか映画を見られませんでした。
「シン・シティ」「ステルス」「エイリアンVSヴァネッサ・パラディー」「ドア・イン・ザ・フロア」「蝋人形の館」です。
「シン・シティ」アメリカの有名なグラフィック・ノベルの映画化だそうだが、見終わって面白かったのか、そうでなかったのか今もまだ判断がつかない作品。ストーリーは私の好みに近いので、できればリアルなカメラワークと色彩で見たかった。すごくもったいない映画。
「ステルス」ものすごくつまらない映画かと思ったら意外と拾い物の戦闘機アクション映画。ラスト、この種のアメリカ映画では中々お目にかかれない感動的シーンも用意されている。ただ日本のアニメではよくあるパターンではあるけど・・・。
「エイリアンVSヴァネッサ・パラディー」題名どおり変な映画。カルトになるかどうかも怪しい。フランス映画らしいがかなりの低予算。お金が掛かっていたのは住民の殺戮シーンだけという感じで、ビデオで見たら早送り必死の作品。
「ドア・イン・ザ・フロア」大好きな作家ジョン・アーヴィング(「ガープの世界」「サイモン・バーチ」「サイダーハウス・ルール」)の小説の映画化。期待したせいか小説家を主人公にした今回の映画は他の作品より跳んだところが少ないように思えて少々物足りなかった感じがした。前半眠かったが後半の盛り上がりが救いの映画。でも好きな作品には間違いありません。
「蝋人形の館」なかなか面白いホラー映画。派手で馬鹿馬鹿しい演出が映画とマッチしている。最後にもう一押しあったら、心ぴくホラー映画だったのに惜しい作品。しかし近頃のアメリカンホラーは昨今のジャパニーズ・ホラーブームから脱却しつつあり、まことに頼もしい。そろそろホラーの傑作が誕生する兆しがあるように思う。いつまでもリングの亜流じゃつまらないものね。それにしても日本のホラーはまだまだ貞子に伽耶子だもんなぁ。
というわけで第34回は「惜しい4本とどうでもいい1本」という事で、心ぴく作品はありません。来月はなんとかもっと多く映画を見て、より多くの心ぴく映画を探そうと思います。

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<愛についてのキンゼイ・レポート>

愛についてのキンゼイ・レポート

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相変わらず映画を見まくっている巻来です。休みの時は何かに憑かれたように映画館に入り浸っています。今回も一日に3館も梯子してしまった日もありました。我ながら呆れています。
ということで今回見た映画は「南極日誌」「愛についてのキンゼイ・レポート」「チャーリーとチョコレート工場」「銀河系ヒッチハイク・ガイド」「Be Cool」「エコーズ」「シンデレラマン」「ナッシング」「ファンタスティック・フォー」の9本です。

「南極日誌」主演のソン・ガンホのファンなので見に行った映画。話はどこかで見たような感じだが、最後まで目を釘付けにさせる演出はさすが。
「チャーリーとチョコレート工場」大好きなティム・バートン監督作なのでかなり期待していった映画。やっぱり面白かった。小人のウンパ・ルンパが良い。限りなく、心ぴくに近いが毒気が薄い分だけ少しマイナス。
「銀河系ヒッチハイク・ガイド」これもかなり期待していった作品。出だしの地球爆発シーンには大いにハマッタが、じょじょにパワーダウンしてくる感じが惜しい。でも久々にSF(センスオブワンダー)作品を見た感じで好きな映画です。
「Be Cool」これも面白かった「ゲット・ショーティー」の続編なので期待していった作品。せっかくのユマ・サーマンがどうでもいいような演出をされて気の毒な映画。眠くなりました。
「エコーズ」6年お蔵入りをしていた映画。ジャパニーズ・ホラーの影響をもろに受けた演出でラストはバレバレだが主演のケビン・ベーコンの演技で最後まで見せる。まあまあの映画。
「シンデレラマン」大好きな役者ラッセル・クロウ主演最新作です。実在のボクサーの話で、ボクシングシーンは手に汗握る迫力があり、とても面白く見ました。心ぴく寸前の映画でしたが意外と見終わってスッキリしたと同時にあまり心に残らない印象で私的には惜しい作品でした。
「ナッシング」「CUBE」のヴィンセント・ナタリ監督の最新作です。またまた奇妙な作品で、全く何も無い世界に行ってしまう二人の社会不適応者の男の物語です。乗れない人全然面白くないでしょうが、こういう世界観が好きな私にはけっこう楽しめました。
「ファンタスティック・フォー」アメコミの映画です。まるでテレビドラマのような映画でした。それ以上でも以下でもありません。

というわけで第33回目の心ぴく映画コーナーは「愛についてのキンゼイ・レポート」です。

1950年代。まだ性的に保守的だったアメリカで、性に悩む人々のために、数多くの国民に綿密なインタビュー調査を行った実在の昆虫学者アルフレッド・キンゼイ博士の物語です。
1万8千人に行ったその調査をキンゼイ・レポートとして出版し大ベストセラーとしながらもやがてマッカーシズム(赤狩り)の影響を受け、不埒な共産主義者のレッテルを貼られ、それでもなお性に悩む人々のために研究を続けていく姿が描かれています。
こういう映画、私は大好きです。1950年代にこんな調査をやるなんて明らかにキンゼイさんは変人です。しかし彼の行動の源にあるのはセックスを語ることを罪と考え、自らを変態ではないかと悩み苦しむ人々を救いたいという純粋な心でした。この弱い人々、権力者の押し付けた価値観で悩む人々に対する限りなく優しい眼差しをキンゼイ役のリーアム・ニーソンがベストの演技力で見せています。
妻役のローラ・リニーも素晴らしく、「ミスティック・リバー」で見せた女の業満開の演技とは180度違う母性を前面に出したマリアのような女性像を見事に演じています。
性的なマイノリティーに対する眼差しも限りなく優しく、レズの女性が「あなたのおかげ命が救われた」と感謝するシーンでは目頭が熱くなりました。
それに対して野放図な性の解放を求める人々、権力が無い弱者や子供相手に屈辱や痛みを与えて喜ぶ変態は、しっかりと社会のゴミとして描かれています。この、監督の制御の効いた大人の演出も心地よく、堂々とした一流の映画としての風格がただよっています。
全ての人間は個人個人が別々の思考を持ったマイノリティーなのです。だから他人に優しくし他人を理解する努力をしなければギスギスした世の中になってしまう。それがよくわかる映画です。とくに権力者や勝ち組という言葉に憧れる人々に見て欲しい映画かもしれません。無理かもしれませんが我が姿を見て少し立ち止まってくれるささやかな機会になってくれればと思います。
マイノリティーに対する優しい監督の眼差しは、ティム・バートンのそれに似ているところもありますが、所詮他人は理解できないものとあきらめ気味のバートン監督とは違い未来に対する明るさがどこかに漂うこのビル・コンドン監督の違いも私的には面白く、
その明るさがこれからどう変わっていくのか変わらないのか興味が沸くところです。次回作も非常に期待しています。
そんなことまで色々考えさせてくれる深くて良い映画です。
見終わって優しい気持ちになれるお勧めの作品です。

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<スターウォーズ・エピソード3/シスの復讐>

スターウォーズ・エピソード3/シスの復讐

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今回見た映画は「スターウォーズ・エピソード3/シスの復讐」「アイランド」「ロボッツ」「おまけつき新婚生活」「いつか読書する日」「チーム・アメリカ/ワールド・ポリス」「妖怪大戦争」「ヒトラー〜最後の12日間〜」「亡国のイージス」「ハッカビーズ」「チャイルド・プレイ/チャッキーの種」「ランド・オブ・ザ・デッド」の12本です。

「アイランド」発想はリアリズムがあり面白いが、後半、単なるアクション映画になってしまった惜しい作品。
「ロボッツ」ラストはいつもの通りハリウッドしているがロボットの擬人化が面白くナカナカ楽しめました。
「おまけつき新婚生活」笑えるがベン・スティラー主演作の中では、もう少しの出来。
「いつか読書する日」素直に感情移入できました。ラストは文字通りあっけなかった印象があるが優れた日本映画だと思います。
「チーム・アメリカ/ワールド・ポリス」もう少し毒のあるギャグが効いているかと思ったが、ただ悪ふざけとゲロネタだけだった印象の作品。
「妖怪大戦争」妖怪ファンの私としては多いに楽しめました。ただ加藤の演技だけが浮いていたような・・・。
「ヒトラー〜最後の12日間」ドキュメント風映画。なら、ニュース映像を使ったホントのドキュメントにしてしまった方が良いような・・・。
「亡国のイージス」前半の海戦シーンは見せるが後半湿り気が多すぎの惜しい日本映画。
「ハッカビーズ」監督と仲間内だけが楽しんでいるコメディー。笑えなかった。
「チャイルド・プレイ/チャッキーの種」前作チャッキーの花嫁の続編、「チーム・アメリカ〜」のような薄っぺらい政治ネタがまったくないだけに悪ふざけのパワーがものすごく、残酷だが笑える作品。
「ランド・オブ・ザ・デッド」ゾンビ映画の始祖、御大ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画。腕が鈍ったのか近頃のゾンビが出てくる、どの映画よりもお尻が痛くなりました。

と、言うわけ第32回目の心ぴく映画は「スターウォーズ・エピソード3・シスの復讐」です。まさか自分でもこの心ぴくコーナーに「スターウォーズ」を書くとは思いませんでした。最初の「スターウォーズ」(エピソード4ということになるのでしょうか)を見たのは大学1年の頃。面白かったことには間違いないのですが、アメリカン・ニューシネマの洗礼を受けた私にとっては単なる冒険SFとしか映らず、同年に公開された「未知との遭遇」のリアリズムの方に深さを感じ感動したのを覚えています。
むしろ、それから2年後の「スターウォーズ・帝国の逆襲」のアンハッピーエンドの終わり方に新鮮さを覚えました。しかし期待した続編「ジェダイの復讐」に見事に裏切られ、「スターウォーズ」のことは私の映画史の中で忘れられた存在になっていました。
それは1999年に「エピソード1」それから「エピソード2」が作られ子供ずれで見に行ったときも同じ思いでした。「ジェダイの復讐」を見たあとに感じた思いと似ていたのです。
やっぱ子供向きだと。そんな思いで「シスの復讐」も子供ずれで行きました。
ところがこれが期待はずれに(?)子供向けではなく、面白く出来ていて驚きました。まさか時代劇を見せてくれるとは。城の中で悪の家老に騙され堕ちてゆく青年剣士。その師匠は、何とか弟子を悪の道から更正させようとするが、叶わず自らの剣で責任を取ろうと骨肉の決闘になだれ込んでゆく。思いきった切り方、切られ方が良く、堕ちてゆくアナキンの鬼気迫る表情が画面を引き締め、監督のジョージ・ルーカスの最後だから何でもやってやろうというヤケクソノパワーが逆に物語に深みを与えていると思いました。
ラストでは不覚にも涙を流しそうにもなりました。
見た人は物語が繋がったからとか、20数年見続けて感慨無量だ。とかいいますが、私の場合この作品だけで良いのです。このエピソード3だけが他のどのエピソードとも明らかに違っていたから好きになったのです。それはこのエピソードだけが私の大好きなノワール映画の雰囲気になっていたからでしょう。ノワール(暗黒映画)の基本である絶望が画面を支配し、その中で、もがき堕ちてゆく主人公が、最後に、そのやるせない感情を爆発させ破滅もしくは彼方へと去ってゆく。その基本に見事にマッチしています。だからリアルなギャング映画に多くのノワールの傑作があるのです。そういえばこのエピソード3もギャング映画そのものではないでしょうか。ジェダイの大量殺戮シーンはまるで「ゴッドファーザー」「グッドフェローズ」の組織内で対立するグループの粛清シーンを彷彿とさせるではありませんか。
そしてアナキン・ダースベーダーの姿はまるでマフィアとして生きることを決断したマイケル(ゴッドファーザーのマイケル・コルレオーネ)の姿と見事に重なります。
そうした好きな映画と重ねて考えることの出来るお気に入りの映画がたまたまスターウォーズというだけで私には題名などどうでも良く楽しめた心ぴく映画になっていました。
たとえ題名が「血煙宇宙街道」(?)でも絶賛の拍手を送ったことでしょう。
とにかく面白い映画でした。

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<ホステージ>

ホステージ

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今月見た映画は「フォーガットン」「樹の海」「50回目のファーストキス」「Dearフランキー」「バットマン・ビギンズ」「ホステージ」「宇宙戦争」「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」「ダニー・ザ・ドッグ」の9本です。
「フォーガットン」最初からネタがバレバレでハラハラもしない駄目ハリウッド映画の見本みたいな映画。
「樹の海」は日本の映画です。自殺の名所、富士の樹海を舞台に自殺したい人、やめさせたい人、樹海から出られない人など4組の人間模様が展開されます。脚本に不自然な所があり途中で映画館を出たくなりましたが最後まで見るとジワット感動してしまいました。最後のエピソードが特に良かったです。
「50回目のファーストキス」ラブコメディーの傑作です。
事故で1日しか記憶が持たない女性に恋する男の悪戦苦闘を描いています。
大笑いの中に切なさが漂う良い作品です。心ぴくものです。
「Dearフランキー」DVの被害を受け、夫から身を隠している母子と、ふとした事でその子の父親を演じなければならなくなった心優しい男との2日間の出来事を描く秀作です。
なかなか感動しますよ。
「バットマン・ビギンズ」前半バットマンが出てくるまでが長く退屈な印象だが、バットマン登場と共に面白くなってくる。特にバットモービルが疾走する場面には燃えました。
「宇宙戦争」大期待して見に行った映画。スピルバーグ監督が、最も得意とする非日常の怪物(鮫・タンクローリー・宇宙人)が冷酷非常に攻めてくるサスペンスに戻ってきてくれたという喜びに、近頃の監督の、なんだか気の抜けた印象の作品群のことは忘れて映画館にいきました。はっきりいって、もう以前のスピルバーグ映画の興奮は望めないということがわかりました。<激突><続激突カージャック><ジョーズ><未知との遭遇><レイダース・失われたアーク>この傑作群を取った監督とは思えないほどのバラバラな印象の映画で、最後はC級SFのような終わり方でした。確かに途中までのサスペンスの叩き込み方は素晴らしいのですが、それに酔いすぎた感じで後半バタバタと予定調和でまとめた感じ。そういえばなんだか日本の巨匠宮崎監督の「ハウル」もそんな印象だったな。とあらためて思った映画でした。
「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」ダメ親父が暴発するだけのお話です。しかしその親父をショーン・ペンが演じているおかげで中年男には感涙物の映画になっていました。
ショーン・ペンの演技の素晴らしさを見る映画です。
「ダニー・ザ・ドッグ」全く期待しないで見た映画です。リュック・べッソン監督作ではなくてプロデュースということに少しの望みを賭けていったのですがこれが当たりの映画で話は漫画みたいなのですが出てくる俳優の演技が良く小気味良いアクション映画になっていました。特に金貸しのボス役のボブ・ホスキンスが良かったです。

という訳で31回目の「心ぴく」映画は「ホステージ」です。
これは紛れもなく近年まれにみるアクション映画の傑作です。
人間をキッチリ描きこんだ犯罪映画の香りさえ漂う感動的な作品になっていました。
主演はお馴染みのブルース・ウィリスです。この情報だけなら私は絶対に映画館に行かなかったでしょう。正直お金を払って見たくない俳優なのです。
成功作は「ダイハード」「パルプフィクション」「シックスセンス」の3本だけだといっても過言ではないでしょう。特に近頃の主演作は面白いものはなく、当然映画館では見ずにレンタルビデオで借りても早送りの衝動に駆り立てられる作品ばかり・・・。
しかし今回はフランス映画「スズメバチ」の監督作だということに多少触手が動かされてはいました。その前に見た「フォーガットン」のあまりの期待はずれの為、溜まったストレスをアクション物で晴らしたいと思っていた時に時間が合ったこともあり、多少のつまらなさは我慢しようと映画館に足を運んだのです。ほとんど期待はしていませんでした。
ところがコレが大正解。
出だしのタイトルロールこそ、こり過ぎてどうかな?と思ったくらいで本編に入ったら何も考えずその面白さに乗せられラストまで行ってしまいました。
原作がいい。脚本がいい。俳優の演技がいい。3拍子揃った映画は久しぶりです。
まずは最初の人質交渉の失敗のシーンから唸らされます。人質になった少年を心配し駆け寄るウィリスの目前で轟く銃声。このシーンでこの映画全体を彩る非常で乾いたタッチが想像でき、はまり込んでしまいました。そして豪邸に入り込む3人のチンピラ。
この三人の性格を手早く納得させてしまう手腕も見事です。
そのチンピラの一人、凶暴な若者マースに撃たれた女警官を救い出すウィリスのリアルな演技とカメラワークに、近頃のお子様アクションしか撮れなくなったアメリカ映画にはならないぞという監督の気骨のようなものが垣間見えて嬉しくなってしまいました。
そうです。アクション映画はお子様向けでは駄目なのです。触ったら切れるような危険な香りに満ちていなければなりません。この映画にはそれがありました。
組織に、愛する妻と娘を人質に取られ、チンピラ三人が子供の人質を取って立てこもる豪邸の中にあるディスクを取って来いと脅され、無我夢中で行動するウィリスの迫真の演技が、見事です。そして縦横無尽なカメラワークと凶暴な香りを発散する脇役の演技がアクションを加速させていき目を見張るラストシーンに突入していきます。
その脇役、特に悪役が見事です。優れたアクション映画には主役を食いそうな悪役が出てくることが絶対条件ですが、この映画にも確かに居ました。
凶暴な若者マースです。何を考えているのか分からない顔つき、時々見せる人質の少女に見せる優しいまなざし、そしてラスト、組織の人間がなりすましたFBIのスワット隊員とウィリスそしてマースとの三つ巴シーンでの狂気の演技。全く凄い。
エピローグのシーンもノワール(暗黒)映画の雰囲気を壊さずスタイリッシュにエンドロールを迎え言うことなし。大満足の2時間を過ごさせてもらいました。
ブルース・ウィリスがんばれ。客の不入りになんて負けるな。フローラン=エミリオ・シリ監督次回作も絶対に見に行きまっせ。と固く心に誓った映画でした。
絶対に面白いですよ。映画館でやっていなかったら是非ともビデオでどうぞ。
早送りのボタンが必要ない超お薦めの傑作です。

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