心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第4回 <ボウリング・フオー・コロンバイン><2002年度映画ベスト10> 2003.02.22

第3回 <ギャング・オブ・ニューヨーク> 2003.01.27

第2回 <フレイルティー妄執(もうしゅう)> 2002.12.23

第1回 <ロード・トウ・パーディション> 2002.11.21

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第31回〜第35回

第26回〜第30回 第21回〜第25回 第17回〜第20回

第13回〜第16回 第9回〜第12回 第5回〜第8回

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第4回 <ボウリング・フォー・コロンバイン>

巻来功士2002年度映画ベスト10

ボウリング・フォー・コロンバイン 2002映画ベスト10
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第4回目は「ボウリング・フォー・コロンバイン」&2002年度・巻来功士・映画ベスト10です。
「ボウリング・フォー・コロンバイン」は、ドキュメント映画です。しかし、堅苦しくはなく、面白く、笑わせながら、アメリカ銃社会の深部をえぐるという見事な創りになっています。
最初の場面、ばら色に見える50〜60年代のボウリング場の風景から現代のミシガン州の田舎町にカメラが転じ、監督のマイケル、ムーアが、地元の銀行に口座を開く為におもむく場面から目を見張る現実に圧倒されます。なんとその銀行は、口座を開いた客に漏れなく、ライフル銃やショットガンをプレゼントしているのです。銀行の地下には巨大な武器庫があり、まるっきり、お馬鹿アクション映画の世界そのものです。銃をムーアに渡す行員の明るい笑顔がそれに拍車をかけます。
その後はアメリカ社会のお馬鹿映画以上にお馬鹿な現実のオンパレード。なぜか床屋のショウケースの中に弾丸の山、売り物だそうで、ムーアが売ってくれというと「身分証など見せなくていいから、いくらでもどうぞ」 ガンマニアの男は愛犬にライフルを背負わせて写真撮影中に実弾入りの銃が暴発してあの世行き。「犬は逮捕できないよ」と笑う保安官。ミシガンの民兵集団の中の三人が逮捕された1995年オクラホマの連邦政府ビルの爆破事件(死者168人、負傷者500人以上)その1人は、証拠不充分で釈放、そこにインタビュウに行くムーア。会ってみるとやはりキレタ男でベットの枕の下には44マグナム、笑いながら自分のこめかみに銃口を当てる始末。
そして題名にもなっているコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件。日本のマスコミが報道しなかった事実が出るわ出るわ。暗く青春の悩みを抱え暴走した二人の若者とその他普通の高校生、という図式での報道、しかしてその実態は、ほとんど全ての親が勤める会社は、世界一の武器開発、製造販売の拠点、ロッキード社だったのです。
ムーアはこの現実に目を向け、親が武器のことをどう子供に伝え、子供たちが武器をどう見ているのかを追求します。親に洗脳された子は、親と同じように、級友が殺されようと、武器は悪くない、使う人間が悪いのだとのたまいます。まるっきり全米ライフル協会のチャールトン・ヘストンと同じことを言います。テレビで人気の犯罪ドキュメントのプロデューサーは言います。黒人やプエルトリカンなどのギャング同士の殺し合いが一番視聴率が取れると。だからそればかりを見ている白人は怖くなり自衛の為に銃を持つ、近くでそんな事件はほとんど起きないのに...しかしそこで起きるのは、疑心暗鬼に狩られた白人の暴走行為なのです。
映画は、その恐怖が今日のアメリカを形作っているという結論を導き出します。
いやあすごいドキュメント映画です。なぜいまブッシュがイラクを攻撃するのか、その原因の一端も透けて見えてくるのですから...
とにかく、大げさではなく、これからアメリカと永遠に付き合わざるを得ない日本人は、生き残る為に、ぜひとも見ておかなくてはならない一本だと思います。
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巻来功士2002年度映画ベスト10

第1位「チョコレート」
アメリカ南部の人種差別主義の父を持つ刑務所の看守と死刑によって夫を失った黒人ウエイトレスの恋。サスペンスフル(?)なまでの切ない恋愛が私の胸をえぐった昨年度ナンバーワンの作品です。
第2位「へドウィック・アンド・アングリーインチ」
性転換に失敗し股間に少しの怒れるものを残したままで場末のロックシンガーとして生きる男の物語、ガープの世界的面白さに満ちていて、流れる曲も最高。お薦めのロックミュージカルです。
第3位「フレイルティー/妄執」
心ぴく2回目に紹介
第4位「ロード・トウ・パーディション」
心ぴく1回目に紹介
第5位「ノー・マンズ・ランド」
現実のボスニア紛争を舞台に、戦争の愚かさがユウモアも交え、しっかりと描かれている傑作。ラストの笑うに笑えぬ恐ろしさは必見。
第6位「スパイダーマン」
いいねえ、あの壁を這う蜘蛛人間の姿、オジサンはあの背中に青春の蒼さというか、虚しさというか、孤独感というか、そんなものを感じて、感情移入できて、面白かったです。同じくサム・ライミ監督の「ダークマン」も大好きです。
第7位「愛しのローズマリー」
ファレリー兄弟監督、脚本のコメディー、前作「メリーに首ったけ」の破壊的なギャグも大好きだが、今回はこれに加えて、なんと泣かせて癒してくれるという、離れ業も見せてくれる。愛すべき作品。
第8位「ストーリーテリング」
悪意の塊のような作品を作り続けるトッド・ソロンズ監督のトラウマ人間観察映画、2話構成になっていて、アメリカ本国では、1話目のあるシーンの半分が墨塗り状態で見えなかったといういわく付きの作品。日本では見られるので、興味のある人は、レンタルでどうぞ。前作の「ハピネス」もすごいぞ。2作とも万人向けではありませんが、パワーに溢れています。
第9位「光の旅人/K−PAX」
精神病院を舞台に、精神科医と自分をK−PAX星人だと信じている患者の物語、見ている観客も徐々に分からなくなっていく所が面白い。謎のままのラストが、良質のSF短編小説の読後感に似て心地いい。
第10位「ロード・オブ・ザ・リング」
説明不要のファンタジー。最後の斬り合いに感動しました。ああ、日本の映画監督も泣かせばかりに走らずに、このくらい痛快な剣豪物を作ってくれないかなー。
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第3回 <ギャング・オブ・ニューヨーク>

ギャング・オブ・ニューヨーク ギャング・オブ・ニューヨーク
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私は、マーチン・スコセッシ監督の大ファンです。
と言うわけで、今回の心ピクは<ギャング・オブ・ニューヨーク>です。
はっきり言って、出だしはいいのですが、前半は眠くなっちゃいました。スコセッシ監督作の中では、失敗作の部類に入ると思います。しかし後半からはすごい!圧倒的におもしろくなります。そして、ここで初めてスコセッシの言いたいことがわかります。
スコセッシは最初からデカプリオとキャメロン・ディアスの恋物語や、単なる復讐の話など作りたくはなかったのです。(今のハリウッドは、こんなヘビーな映画に金を出すはずがありません。だからスコセッシは考えたのだろうと思います。デカプリオを出そうと。まさにスコセッシの計算は当たり、映画会社はタイタニックの夢再びと、金を出してしまったのです。こんな勝手な推理はどうでもいいのですが、とにかく、私にとってはスコセッシが、これほどのスケールの作品を作ってくれてうれしい限りなのです。)
スコセッシが本当に作りたかったのは、アメリカの血塗られた歴史そのもの。ニューヨークと言う舞台を借りて<タクシー・ドライバー>や<グッド・フェローズ>で描いたように、この国の混沌とした溶鉱炉のような凶暴なパワーそのものだったのではないかと私は思うのです。だから一番輝いていたのは、肉きり包丁を振り回していたアングロサクソン系ギャング<ネイティブス>のボス、ダニエル・ディ・ルイス>だったのです。心の中に溜まったストレスを、暴力でしか体現できない男、まさに<タクシー・ドライバー>のトラビス、<レイジング・ブル>のラモッタ<グッド・フェロー><カジノ>でジョー・ペシが演じたマフィア・・・と彼が幾度も描いてきたキャラクターそのものです。私は、そこを見て取れたので、この映画がいたく気に入りました。やはりスコセッシだ。やってくれた!と。
アングロサクソン系と、後から来たアイリッシュの移民の対立、北軍による住民の虐殺、それに伴い、住民のパニックによって殺されるもっと弱い立場の黒人達。今どきこれほど自由の国アメリカの恥部に、真正面から光を当てられる監督が他にいるでしょうか?それだけでも素晴らしいのです。
だから、この映画はスコセッシ監督の中では失敗作の部類と思うのですが、他に転がる安易なエンターテイメント(去年から今年にかけて製作された映画)すべての中において、大傑作の部類に入る映画なのです。

<タイタニック>を見る気でやって来たカップルは、とんでもないものを正月早々見せられたと、げんなりきたのではないでしょうか?でも、それでいいのです。それがスコセッシが毎回映像の中に込めているテーマなのですから。
嫌いなやつは徹底的に嫌ってもいい、自分は自分の作品をつくるのだ、と。しかし、それがもともと創作というものだったのではないでしょうか。十人すべての人の心は絶対に打てないものです。十人が面白いと思って、すぐに忘れてしまう作品より、三人、いや二人の心の中にいつまでも生き続ける作品、それこそが作者冥利に尽きるというものではないでしょうか。
私は<ギャング・オブ・ニューヨーク>を観てつくづくそのことを考えさせられました。エンドクレジットの時流れるU2の曲をカッコいいなー、と呟きながら最後まで聴き、明るくなって周りを見ると、殆んどのお客さんは帰ってしまってました。
アア、映画の見方は70年代〜80年代と、やっぱ徹底的に変わっちゃったんだなァ戸、一人寂しく劇場を後にした私でした。
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第2回 <フレイルティー妄執(もうしゅう)>

フレイルティー
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第2回目は、『心ぴく映画コーナー』にふさわしい極めつけの、お薦め作品の登場です。
<フレイルティー妄執(もうしゅう)>です。
ただし、心臓が弱い方には、命の保障が出来ないほどの、超ど級の恐怖作品なので、その方面が不得意な方は、遠慮したほうがいいかも、、、しかし、この作品、大量の血や内臓ドバッのシーンは、全然ありません。(「セブン」などの映画がスプラッターに見えるほどです。)ただ、その行為にいたる話が恐ろしいのです。まさしく演出の勝利、監督の力のなせる技です。
その監督は、なんと主演の一人、お父さん役の、ビル,パクストン自身がやっているのです。そして原作も、。私は一発でこの監督のフアンになりました。これまでは、ただの善良な人(ツイスター・シンプルプラン)、悪くはない話に出ているのですが、パッとしない人だと思っていましたが、まったく印象が変わりました。とにかく怖い話です。
話はまず、男がFBIの事務所を訪ねて来るところから始まります。
その男は、捜査官に今、全米で起こっている「神の手」殺人(人を誘拐し、バラバラにして捨てる)の犯人を知っていると告白するのです。
そして、舞台は二十年ほど前のテキサスの田舎町にさかのぼります。その男の家庭は、母は死に、父と弟の三人暮らし、父は真面目な自動車修理工で、敬虔なキリスト教信者でした。
しかしある日、その父が神の声を聞いたと二人の息子に語るのです。「自分は、神のシモベとなった。人間の中に隠れている悪魔を見つけ出し、抹殺することが私の使命だ。だからお前たちも協力してくれ。」と。それを聞いた12歳の兄は、お父さんは気がふれたと思いますが、恐ろしくて、それに従い、9歳の弟は、大好きな父を信じて従います。
そして、父親が、神から啓示を受け、頭にひらめいたという名前を書き出し、それと同姓同名の人間、老若男女かまわず誘拐して来て、神に貰ったという斧でバラバラにして殺してしまうのです。
その行為をすぐソバで見る子供たちの顔、、、本当に怖い。そして、ここから始まる大ドンデン返しの連続、まさに圧巻。
この映画を見ている時、私は一瞬も気を抜くことが出来ませんでした。それほど集中した映画は久しぶりです。
ちなみに、東京では私が知る限り、2館ほどでしか上映していなかったと思いますが、やってた映画館が凄い所でした。すぐ横を地下鉄が通っているのです。絶えずゴーという音が聞こえてくると言う信じられない封切館でした。(知ってる方も多いと思いますが、、)しかし、そんな環境が、まったく気にならないほどの第一級のホラーサスペンス映画でした。
とにかくお薦めです。
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第1回 <ロード・トウ・パーディション>

ロード・トゥ・パディション
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では、その「心ピク」1回目は、父子愛ギャング映画「ロード・トウ・パーディション」です。
これは、主演のトム・ハンクスには、珍しく、というより、おそらく初めての正統派ギャング映画です。今までのトム・ハンクスのイメージで普通の親子の感動ものと思い、ロマンチックな気分に浸ろうと、見に来た女性客が驚くほどの、男の映画になっていました。特に良いシーンが、主人公のマイケル(トム・ハンクス)が下の息子と妻を殺したのは、敬愛するボス(ポール・ニューマン)の、馬鹿息子だと知り、復讐の為に命を狙います。ボス(ポール・ニューマン)は、息子のように可愛がっていたマイケル(トム・ハンクス)を、苦渋の決断をし、殺し屋(ジュウド・ロウ)を雇い殺させようとします。
そのボス(ポール・ニューマン)を、悲痛な表情で、トンプソンサブマシンガンで***す、トム・ハンクス。
この時、トム・ハンクスを見て「お前で良かった」、と、雨の中でつぶやく、ポール・ニューマンの表情が絶品で、まさに見ていて心臓がピクピクする熱演でした。
義理、友情、仁義、裏切り、そして父子愛に溢れた、男泣きの映画を楽しみたい方には、お薦めの作品です。
では、また。
<***と、イラストの墨塗りカ所は、映画を実際、ご覧になってから、ご理解下さい。>
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