心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第50回 ブログ始めました

第49回 <ザ・シューター/極大射程><アポカリプト><ゾディアック><ラッキー・ユー>

第48回 <ハンニバル・ライジング><ツォツィ><スパイダーマン3><スモーキンエース 暗殺者がいっぱい><歌謡曲だよ人生は><パッチギ!LO」E&PEACE>2007.05.26

第47回 <バッテリー><ブラックブック><黒い目のオペラ><ブラッド・ダイヤモンド>2007.04.19

第46回 <幸福な食卓><ルワンダの涙><あなたになら言える秘密のこと><善き人の為のソナタ>2007.03.10

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第31回〜第35回

第26回〜第30回 第21回〜第25回 第17回〜第20回

第13回〜第16回 第9回〜第12回 第5回〜第8回

第1回〜第4回


<ザ・シューター/極大射程><アポカリプト>
<ゾディアック><ラッキー・ユー>

<ザ・シューター/極大射程><アポカリプト><ゾディアック><ラッキー・ユー>

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第49回目の心ぴくです。
今回見た映画は「ザ・シューター/極大射程」「アポカリプト」「300(スリーハンドレッド)」「プレステージ」「ゾディアック」「ラッキー・ユー」「リーピング」「ダイ・ハード4.0」の8本です。

「300(スリーハンドレット)」
絵作りやアクションはすごいのですが、どうも乗れませんでした。まるでアニメを人間で演じているようで紋切り型の脚本が好みではありませんでした。期待していただけに惜しい作品です。

「プレステージ」
最初から、トワイライトゾーンの1作品のような物語だと分かっていれば、こんなに落胆はしなかったのかもしれませんが、リアルなマジック対決物を期待していただけに肩透かしを食らったようなラストには唖然とさせられました。ただ幻想怪奇物としても中途半端だったような気がします。雰囲気は素晴らしいだけに、惜しい作品でした。

「リーピング」
聖書にある7つの災いをもとにしたホラー映画。最後に少しどんでん返しがあるものの、
そんなに怖くはありません。熱心なキリスト教徒がみたら怖いんでしょうか?的な作品。

「ダイ・ハード4.0」
思った以上にアクションの羅列だけで、なにもない作品。ラスト近くの無理矢理大アクションもなんじゃこら的。ダイ・ハードシリーズの中で一番ペケな感じがしました。

というわけで今回の心ぴく作品は
「ザ・シューター/極大射程」「アポカリプト」「ゾディアック」「ラッキー・ユー」の4本です。

「ザ・シューター/極大射程」
天才狙撃手の主人公が罠にはめられ、やがてその腕と技術で敵に反撃してゆく様が骨太な感じで描かれていて面白く見ました。狙撃やサバイバルのうんちくなども物語りにリアル感を持たせることに成功していると思います。敵の正体も現実のアメリカの権力者をモデルにしているのは明白で、ある意味脳天気なゴラク作品にこんな敵を登場させることが出来るアメリカは、イラク戦争で傷ついた事によって少しづつマトモニなってきているのかなとも思いました。ベトナム戦争で傷ついたあとのアメリカ映画が素晴らしいアメリカンニューシネマを誕生させたように、この映画を発展させたような社会派アクションの誕生を期待せずにはいられません。そんなことも考えさせてくれる映画でした。
それに比べ我が国の映画は・・・。こんなに問題山積みの権力が支配する現実を、せめてゴラクアクションの形でなぜ描けないのでしょうか?60年代70年代の日本映画には腐るほどあったのに・・・。目の前の報酬のために、自ら捨てた自由の代償は高くつくと思いますよ。後悔しない為に是非とも、リアルで腐った権力者を敵にまわした和製アクション映画の誕生を期待したいものです。そんなことまで考えさせてくれる。アクション映画です。もしもわが国で作ったら、どういう敵を出すことになるだろうかと考えて見てください。お薦めの映画です。

「アポカリプト」
メル・ギブソン監督のこだわりのアクション映画です。有名な俳優は一人も出てきません。
全編マヤ語のセリフです。日本では字幕なので違和感はないですが、アメリカ本土の字幕を見慣れていない人が見るのは大変だったと思います。そんなリスクを犯してまで作りたかった作品だからこそ監督の執念が画面から溢れ出して来るような映画に仕上がったのでしょう。
単純なサバイバルアクション映画です。傑作アクション映画とは単純で分かりやすいストーリーでどれだけ主人公に感情移入でき、手に汗握る事が出来るか、だと思いますが、
まさしくこの映画はそんな条件を全て満たしているのです。強力な軍隊に村を襲われ、生贄にされそうになった主人公がただ生き残る為にその兵士達の執拗な攻撃から身を守り反撃しながら、愛しい妻と子が待つ村へとひた走る。それだけの映画の中に手に汗握るアクションが全編に散りばめられてあります。見事な演出です。アクション映画の新しい旗手の誕生と言っての過言ではないでしょう。そんな傑作アクション映画です。

「ゾディアック」
監督デビィット・フィンチャーらしからぬ、じっくりドキュメント風に取った傑作実録サスペンス映画です。2時間半以上の映画で、リアルで恐ろしい殺人シーンはほんの数分で、正直前半眠くなりましたが、登場人物たちの右往左往がやがてこの事件がアメリカ社会にどんな影響を与えていったのか分かってくる後半は素晴らしく、警察もマスコミも社会全体も小さい人間達の集合体なんだなと改めて思い知らされる気がしました。個人の思い込みや、組織のわずかなミスが起こす大きな現実がしっかり描かれている稀有な作品として昇華していると思います。これぞ社会派サスペンスの傑作です。じっくりと腰をすえて見てください。

「ラッキー・ユー」
近頃めずらしいギャンブラーの話です。というわけでもないでしょうが、全編古きよき50年代のアメリカ映画の匂いが漂っています。嫌い合っている父と子のスタッド・ポーカー合戦もどことなく温かさが漂い安心して見ていられます。60年代以降のギャンブル映画にあるような殺伐とした演出をわざと避けたような脚本もこの映画にはマッチしているように感じました。
見終わって、どんでん返しのカタルシスや、破滅の美学に酔うようなギャンブル映画は結構見ましたが、幸せな気分になる映画はなかなかないと思います。やはりカーティス・ハンソン監督の力量だと思います。<LAコンフィデンシャル><イン・ハー・シューズ>とはずれ無しを連発する作家性が、ここでも如何なく発揮され、成功していると思います。
温かい気持ちになりたい人に是非お薦めの映画です。デートムービーとしても最適だと思います。お勧めの心ぴく映画です。

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<ハンニバル・ライジング><ツォツィ><スパイダーマン3>
<スモーキンエース 暗殺者がいっぱい><歌謡曲だよ人生は>
<パッチギ!LO」E&PEACE>

<ハンニバル・ライジング><ツォツィ><スパイダーマン3><スモーキンエース 暗殺者がいっぱい><歌謡曲だよ人生は><パッチギ!LO」E&PEACE>

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第48回目の心ぴくです。
今回見た映画は「ハンニバル・ライジング」「ツォツィ」「クィーン」「スパイダーマン3」「バベル」「ゲゲゲの鬼太郎」「スモーキンエース 暗殺者がいっぱい」「歌謡曲だよ人生は」「パッチギ!LOVE&PEACE」「黄色い涙」の10本です。

「クィーン」
役者の演技はすごく良かったが、ダイアナ妃の死の真相に迫るのでもなく、見終わったあと、だからなんなの感が漂ってしまった。惜しい作品

「バベル」
メキシコのシーンの、リアルな演出には唸らされたが、東京のエピソードは何だか嘘っぽく感じられた。中途半端なラストもちょっとと言う感じ。

「ゲゲゲの鬼太郎」
水木しげる漫画のにおいが全然しない別物映画。
少しは、低予算だが楳図かずおの精神を生かした映画<猫目小僧>を見習って欲しかった。
いい大人が見ていて恥ずかしくなる映画。

「黄色い涙」
大好きな漫画家、永島慎二の原作の映画化だと知り見に行きました。30数年前、NHKの銀河テレビ小説でやっていたドラマ<黄色い涙>と同じ脚本家の市川森一さんの担当だということで、原作の雰囲気を壊さずに撮れていた事には感心しました。
しかし登場人物がアイドルグループの嵐の面々だったので、テレビドラマの配役(森本レオ・下条アトム・岸部シロー)ほどの個性が感じられなく途中まで感情移入できなくて困りました。同じ脚本、別の俳優でもう一度見てみたい大変惜しい作品です。

ということで今回の心ぴく映画は大甘の6本になってしまいました。

「ハンニバル・ライジング」
殺人鬼レクター博士の誕生編。ストレートな復讐物になっているのが心地いいです。幼い頃、流れ者の兵士達から受けた酷すぎる仕打ちに対して復讐鬼になることにより生きる意味を見出すレクター。手を変え品を変えして行われる残虐な復讐シーンも相手が、ケダモノのような奴らなので、やったれ!と言うでカタルシスを感じます。ラストの尻切れトンボのような印象が惜しいですが、大甘で心ぴく映画決定です。

「ツォツィ」
アパルトヘイト廃止後。現在の南アフリカを描いた秀作です。
白人と黒人の貧富の格差から、現在では黒人の中での格差が問題になっているという社会背景を浮き彫りにしています。ストーリーは貧困と虐待によって家を飛び出した少年がギャングとなって盗みを繰り返す日常を描き、ふとしたことで赤ん坊を誘拐してしまうことで徐々に人間性を回復してゆく様をシンプルに描いています。これから、誰が望んでいるのか知りませんが、格差社会に突入していく日本にとって、人事でない社会が描かれています。
私の取りこし苦労なら良いのですが・・・。そんな心ぴく映画です。

「スパイダーマン3」
やはり面白い。話が詰め込みすぎの感じはあるものの、青春人間ドラマの基本を外していないので、他の単なるスーパーヒーロー物とは一線を隔す出来栄えは健在です。
大人も共感を覚える人間的苦悩も、いい具合にスパイスとして散りばめてある所が憎いくらいです。これはホラーから奥深い人間ドラマの傑作までものにするサム・ライミ監督の力であることは紛れもなく、4・5と期待せざるを得ません。できれば違う分野の(日本で言うなら単館系)作品も見たいのですが、4をやるならそんな暇などないかの知れませんね。とにかく見て損はないアクション青春映画の傑作です。

「スモーキンエース 暗殺者がいっぱい」
コメディー色が強いアクション映画だと思ったら意外とミステリー感覚の謎解きも用意されている、てんこ盛りの1時間半でした。分かり難さはありますが、リアルな銃撃戦が素晴らしく、久しぶりでアクションを堪能しました。証人を守るFBIとマフィアが雇った殺し屋達の死闘。全ての登場人物の個性が描き出されていて、誰が生き残るか分からない展開に興奮させられました。特にレイ・リオッタ扮するFBIと女殺し屋がなかなか良かったです。それとクレイジーな空手少年も・・・。
アクションシーンだけ見ても満足できる映画です。心ぴく決定です。

「歌謡曲だよ人生は」
60年代から70年代の歌謡曲をモチーフにした10数本の短編を集めたオムニバス映画です。
いい出来と悪い出来の差が激しく、<愛しのマックス><ラブユー東京><懺悔の値打ちもない」><逢いたくて><みんな夢の中>が心ぴく映画になっていました。

<愛しのマックス>は漫画家の蛭子さん監督作で全然期待をしてなかったのですが、漫画の世界と異様にマッチして怪作に仕上がっていました。面白かったです。

<ラブユー東京>も同様に怪作で、陳腐なカラオケ映像のような作りが逆に曲の歌詞を盛り上げ、爆笑物の作品に仕上がっていました。

<懺悔の値打ちもない>は昔のATG映画や日活ロマンポルノの雰囲気で、正攻法で描かれた演出が非常に心地よく、昔のその系統の作品を見直したくなりました。セリフが一つもない中で主人公を演じる余貴美子が素晴らしく、傑作<ヌードの夜>を思い出しました。
こんな日本映画をもう一度見たいと思わせる短編の傑作です。

<逢いたくて>
ストーリーは普通ですが、やはり園マリの唄が素晴らしく、主人公が走る場面で何故か感動してしまいました。名曲がなせる業です。

<みんな夢の中>
これも唄が映像に勝っていました。同窓会で古い小学校に集まるという、よくあるエピソーをこれだけノスタルジックに心ぴくな感じにしたのは、まぎれもなくこの唄の力です。
というわけで、あくまで私好みの心ぴく映画です。

「パッチギ!LO」E&PEACE」
井筒監督入魂の力作です。<パッチギ1>よりエンターティメント性は確実に落ちていますが、その分監督の言いたい事がはっきりと出ていて感動しました。戦争に美談も英雄もない、みんな被害者だという主張に大いに共感させられます。ただ言いたい事が先走り、舌足らずの演出が、ある人には誤解を与えるかもしれませんが、色々な意見を聞いたり見たりして判断するのは観客の自由であり、見識を広げて真実を判断するいい材料になっていると思います。近頃こういう腹の据わった日本映画が少なくなってきました。
異常なほどです。ここに描かれていることを学校で教えていないせいで、嘘を描いていると思っている人もいるそうですが、ここで描かれているものは紛れもない事実です。
国と国が戦争になる最大の原因は、人間同士と同じくコミュニケーション不全から起こるといわれています。つまり外交不全です。歴史の共通認識を持つのが戦争回避の最高の手段だと言ってもいいでしょう。冷静に歴史を見つめることが出来ない人間が半数を超えたときにこの国は確実に不幸になると思います。逆に冷静に歴史を見つめる目を持ったときに初めて、わが国の意見に他国が耳を傾けるのです。他国の間違った政治状況も非難できるのです。そういう開かれた国になる第一歩として、不愉快に感じる観客もいると思いますが、見てください。自分の頭で考える一歩になると思います。感情に流されずに真実を直視する勇気。そうしたものも与えてくれる映画です。井筒監督がんばれ。傑作心ぴく映画です。

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<バッテリー><ブラックブック>
<黒い目のオペラ><ブラッド・ダイヤモンド>

<バッテリー><ブラックブック><黒い目のオペラ><ブラッド・ダイヤモンド>

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第47回目の心ぴくです。
今回は「バッテリー」「ゴーストライダー」「ブラックブック」「パフューム ある人殺しの物語」「ラストキング・オブ・スコットランド」「黒い目のオペラ」「ブラッド・ダイヤモンド」の7本を見ました。

「ゴーストライダー」
主人公も敵の悪魔どもも、強いのか弱いのかさっぱり分かりませんでした。
ただ一箇所だけ、新旧のゴーストライダーが併走する場面だけが、とてもかっこよかった。
ただそれだけの映画です。

「パヒューム ある人殺しの物語」
出だしはとても面白いと思いました。猥雑な18世紀のパリの様子が細かく描かれていて、主人公が最初の殺人を犯すところも納得できました。しかしそれからの展開が、たんなるホラ話をつなぎ合わせた印象になり、主人公もただの化けモノ化していって、作りが粗雑になってきたような感じに・・。やはりどんな物語でも、少しは登場人物に共感を得られなければ駄目だと思うのですが・・。
最初が良かっただけに、とても惜しい作品です。

「ラストキング・オブ・スコットランド」
本当にこの物語にあるように、ウガンダの独裁者アミン大統領に仕えたスコットランド人青年が居たかどうか分かりませんが、やはりこの映画も演出がギクシャクしている印象がしました。ドキュメンタリー風にしたかったのか、サスペンスホラー風にしたかったのか後半に行くにしたがって混乱していくように見えました。紋切り型ではないアミンの人間としての狂気を見たかったように思います。

というわけで
第47回目の心ぴく映画に決定したのは、「バッテリー」「ブラックブック」「黒い目のオペラ」「ブラッド・ダイヤモンド」の4本です。

「バッテリー」
泣きました。少年達の、はつらつとした演技と、登場人物一人一人の人間性が丁寧に描かれている脚本が見事にマッチして、年と共に涙腺の緩んでいる私のツボにはまってしまいました。とてもクールな天才投手の主人公と温かい人柄のキャッチャーの友人。そして病気の弟に、愉快な仲間達。とてもベタな友情モノにみえて、実はラストまで見ていけば家族の葛藤の物語だったというもう一つのストーリーも見えてくる演出が見事です。
母親役の天海優希にあれほど泣かされるとは思いませんでした。
太陽と土の匂いがするような映画です。
昔少年だった人たちに、特にお薦めの傑作映画です。

「ブラックブック」
大好きなポール・ヴァンホーベン監督の最新作です。現代にも続く、とても重いテーマを、良い意味で猥雑に、そして刺激的に撮ったエンターテイメントの傑作です。
ナチに対する女主人公の一途な復讐心をテーマに、それでも揺れ動く女心により、思わぬ方向に物語が進んでゆくさまをサスペンスいっぱいに描いています。
時にエロチックに、時にバイオレンスいっぱいに演出された映画は、東映映画の「女囚さそり」をふと思い出したりしてとても嬉しく感じました。
思えば近頃、こんな過剰なほどにサービス満点の映画があったでしょうか。
やはり今世紀最後の総天然色娯楽映画の天才監督ヴァーホーベン、深作欣二亡き後、もうあなたしか残っていません。とにかく応援しますのでこれからもパワフルな総天然色娯楽映画を撮り続けてください。あなたならどんなに重い社会派のテーマでも、だれにでも興味がもてるような映画にしてくれるはずです。とにかくすごい才能だと今更ながら気付かされました。そんな天才監督が撮った傑作です。面白いですよ。是非見てください。

「黒い目のオペラ」
中国人監督がマレーシアを舞台に撮った人間ドラマです。寝たきりの若者。それを世話する一杯飲屋を経営する母(?)、その家の天井裏に寝起きする奉公人の若い女。ひと言も喋らない中国から流れてきたような風来坊の若者。その若者を世話する中東のほうから出稼ぎに来たような青年。主人公はほぼこの5人で、登場人物の素性は詳しくは語られません。
BGMはほとんどなく、正直、見始めてすぐ睡魔に襲われました。
それでも見続けるうちに登場人物一人一人の行動に引き込まれ、マレーシアの下町の熱気がこちらまで伝わってきて物語の全てに感情移入してしまいました。
この雰囲気で思い出したのは、学生時代よく見たATG(アートシアターギルド)の映画や、良質の日活ロマンポルノ映画です。まるで人間の全てを見せてしまいそうな演出は、今のハリウッド映画や、漫画みたいな脚本の、日本のテレビドラマからは完全に消え去ったもので、初めて見る人は好き嫌いがハッキリと出る映画だと思います。
日本全国でも4館くらいでしかやらないでしょうから、レンタルで見るしかないと思います。試しにみてください。ATGや日活ロマンポルノに感動した経験がある人なら必見の映画です。唯一のBGM、オペラの流れるシーンは良いですよ。傑作です。

「ブラッド・ダイヤモンド」
デカプリオが元傭兵を頑張って演じている社会派アクション映画です。
ダイヤモンドに絡むアフリカの厳しい現実が描かれていく前半は素晴らしく、まるで傑作<ホテル・ルワンダ>や<ルワンダの涙>、<イノセント・ボイス/12歳の戦場>を思い出させました。しかし監督はあの<ラストサムライ>のエドワード・ズウイック監督、不安がよぎりましたが、なんとか<グローリー>のレベルに近づこうとしていて好感が持てました。中盤から後半にかけて徐々にハリウッド製アクション映画に近くなってきますが、デカプリオの厳しい表情の中チラリと見せる、切ない表情がそれとは一線を隔す良い結果になっていると思いました。監督の失敗を役者が助けた稀有な映画です。
私の評価は大甘ですが、最後までデカプリオの演技力で魅せた傑作だと思います。見てください。

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<幸福な食卓><ルワンダの涙>
<あなたになら言える秘密のこと><善き人の為のソナタ>

<幸福な食卓><ルワンダの涙><あなたになら言える秘密のこと><善き人の為のソナタ>

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第46回目の心ぴくです。
今回見た映画は「DOA/デッド・オア・アライブ」「どろろ」「幸福な食卓」「ルワンダの涙」「あなたになら言える秘密のこと」「善き人の為のソナタ」の6本です。

「DOA/デッド・オア・アライブ」
ゲームの映画化。出だしの女怪盗のエピソードだけが見所の作品。

「どろろ」
これも出だしからスコーピオンキングのような化け物の所までが見所になっている。物語が進むにつれて出てくる妖怪は小粒になり、最後はなんと・・・。
せめて原作通りにラストはヌエ+一揆の大スペクタクルにしてもらいたかった。

ということで、なんと嬉しいことに今回も心ぴく映画大猟4本になりました。
近頃の映画は面白くないと思っている人。ハリウッド映画やテレビ局製作の日本映画意外を見てみればいいですよ。面白い映画が沢山在ります。
心ぴく映画最初は

「幸福な食卓」日本映画です。
父親が「今日から父さんは父さんをやめる」という突拍子もない事を言う予告編を見て、テレビドラマのような、非現実で漫画みたいな映画を想像して敬遠していましたが、信頼する評論家がお薦めのコメントを雑誌に載せていたので見に行きました。当たりでした。
主人公の女の子が中学三年から高校一年に成長する二年間を描いています。
まずそのリアルな生活描写に唸らされます。近頃の日本映画にありがちな、まるで漫画のセリフのような説明口調が抑えられています。だから自然に映画に入り込むことができ、
作品の底に流れる生と死の影を読み取ることができて、ある意味日常に潜むサスペンスな雰囲気も味合わせてくれて全く飽きさせませんでした。そして来るラストの盛り上がり、それによって少女が明らかに成長したと分かる表情で歩いてゆくシーン。
涙が出ました。こんなに映画館で泣いたのは久しぶりです。近頃涙腺が緩んできたことは確かですが、やはり脚本の見事さ、俳優陣の演技の見事さにあると思います。
主演の北乃きいの演技は素晴しいの一語です。この監督がテレビで活躍している人だと聞いて驚きました。テレビへの偏見を捨てなければとも思いましたが、やはり監督は
才能の切り売りはできる限り辞めて、丁寧に本作のような映画を作り続けて行って貰いたいものです。確かに映画だけじゃ生活できないこの国の、文化に冷徹な所も問題なのですが・・・。
とにかく日本映画の傑作です。見てください。

「ルワンダの涙」
<ホテル・ルワンダ>に勝るとも劣らない傑作です。主人公がルワンダの虐殺に無関係なイギリス人教師なので、やはり無関係な私たち日本人は容易に感情移入することが出来て、よりルワンダ問題の深刻さを実感することができます。国連軍監視部隊の無力さ、メディアの無力さ、ぞっとします。主人公は私たちと同じ無力で善意の人間なのです。この映画は善意だけでは解決できない問題が世界中にあると気付かせてくれます。そしてその瞬間が目の前に展開した時にどういう行動を選択するか、観客に問いかけてきます。おまえは教師の立場をとるか、牧師の立場をとるか、重い選択を迫ります。そしてラストの余韻。傑作です。原題はシューティング・ドックス(犬を撃て)です。この言葉が映画全体を表しています。なにもできないで犬を撃つだけしか出来ない国連軍。それが世界の現実なのです。お薦めの傑作です。

「あなたになら言える秘密のこと」
男と女の出会いの物語です。女は東欧出身の元看護師。男は海上油田の技師で、事故のため火傷を負い2週間は身体を動かせぬまま海上の油田基地のベッドに寝かされている。
女は行きたくもない旅行先で、緊急の看護士として雇われ、男のもとえ行くことになる。
これがプロローグです。
男も女も秘密を持っている事がわかります。女は絶えず不機嫌で笑顔など見せません。
男は体の傷に苦しみながらも陽気です。しかし、ふとした時に事故による心の傷の重さがにじみ出てきます。寝たきりの男役のティム・ロビンスが見事です。しかしそれは、男の心の傷など吹き飛ぶほどの衝撃が走る後半の、伏線でしかないのです。
油田基地に事故後待機している登場人物が個性豊かに書き分けられていて見事です。
しかしなによりこの映画の核となる女の主人公の秘密に、息が詰まるほどの衝撃を受けます。
これをここで書いてしまうと、観客に衝撃を与えてこの問題を考えてもらいたいという監督の考えに沿わないので書きませんが、
とにかく自分の目で確かめてください。傑作です。

「善き人の為のソナタ」
ドイツ映画です。ベルリンの壁が崩壊する数年前の東ドイツの話です。
シュタージという東ドイツの国家保安省が、あらゆる方法を使い国民を監視しています。
これはシュタージの局員と盗聴され監視される舞台演出家とその恋人の女優の話です。
怖い映画です。私はすぐに感情移入してしまい、もしも日本がこんなに恐ろしい監視社会になったらどうしようなどと考えながら見てしまいました。
国家の為、と言うのが最優先され個人の人権がないがしろにされる社会。
まるで日本のアナクロ政治家が目指しているような社会じゃないですか。
そうです、この映画で描かれた東ドイツでは、権力を持った政治家が自分の欲望を満足させる為に、個人の人権を踏みにじりとんでもないことをしています。
犠牲になるのは演出家の恋人同士ですが、それを盗聴していた局員が、二人の愛の語らいを聞いているうちに徐々に人間らしさを取り戻していきます。
しかしこの映画の素晴らしい所はここからで、物語は三者三様の人間性を浮かび上がらせ、
自分の信じる愛に忠実に生きようとしてもがき苦しむ姿を、サスペンスに絡ませ観客の目をクギずけにさせる演出で描いていきます。超一級のサスペンス映画と言っていいほどです。
そして悲劇のあとやってくる全てが癒されるようなラスト。
傑作です。見終わったあとでも今の統一されたドイツまで思いをはせることができました。
今も体制によって傷つけられた人、傷つけた人が、多数存在するドイツを、高い人権意識を保ち、何とか一つにまとめようとするドイツ国民には頭が下がるばかりです。「今の日本は、人権の事ばかり言う人権メタボだ。」などとあまりに低級な意見を吐く政治家に是非とも見てもらいたいものです。民主主義じゃなくなり、人権が無視される国家がどんなに恐ろしいかが良く分かります。
とにかく色々なことを考えさせてくれる傑作です。是非見てください。

さて、皆さんお待ちかねの(?)2006年版巻来功士的映画ベストテンを発表したいと思います。
同列第1位「父親達の星条旗」「硫黄島からの手紙」44回・45回心ぴく
「蟻の兵隊」41回心ぴく

第2位「ブロークバック・マウンテン」38回心ぴく
第3位「007 カジノ・ロワイヤル」44回心ぴく
第4位「ホテル・ルワンダ」37回心ぴく
第5位「トゥモロー・ワールド」44回心ぴく
第6位「サイレント・ヒル」41回心ぴく
第7位「トランス・アメリカ」42回心ぴく
第8位「プルートで朝食を」41回心ぴく
第9位「歓びを歌にのせて」38回心ぴく
第10位「嫌われ松子の一生」40回心ぴく

昨年は世界中がリベラルに傾きだしたと実感する映画のオンパレードになり
ました。今年になって日本でもそういう意識が高い作品が出始めた事は嬉しい限りです。
できればそんな作品が国内でも大ヒットする事を願います。今年もいい映画と至福の出会いをできますように・・。

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