心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第25回 <血と骨> 2004.12.27

第24回  <「コラテラル」「エイプリルの七面鳥」「オールド・ボーイ」「砂と霧の家」> 2004.11.28

第23回  <「それなりの9本」> 2004.10.18

第22回  <華氏911> 2004.09.22

第21回  <スパイダーマン2> 2004.08.18

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第31回〜第35回

第26回〜第30回 第17回〜第20回 第13回〜第16回

第9回〜第12回 第5回〜第8回 第1回〜第4回

戻る


<血と骨>

血と骨
※画像をクリックするとイラスト表示

第25回の心ぴくです。
2004年最後の月も映画を見まくりました。
「パニッシャ−」「ハウルの動く城」「スカイキャプテン」「エイリアンVSプレデター」「戦争のはじめかた」「バッドサンタ」「レディー・ウェポン」「ターミナル」「ジャッカス・ザ・ムービー」「ふたりにクギづけ」「血と骨」と11本。
面白くなかった順に並べてみました。
「パニッシャー」硬派アクションにするか、ぶっ飛びマンガ的アクションにするか決めてほしかった。どっちつかずの作品。 
「ハウルの動く城」前半はすごく面白いが後半無茶苦茶になる。期待が高かったせいか失望感が強い作品。
「スカイキャプテン」50年代SF映画の雰囲気を出すことだけに力を注いだ作品。面白いシーンもあるが、それなりの出来。
「エイリアンVSプレデター」これも期待が高かったせいで失望感が強かった。お金のかけ方が<プレデター2>並みのB級作品。それなりに楽しめる人もいるかも・・。
「戦争のはじめかた」惜しい戦争コメディー。もう少しブラックな笑が効いていれば傑作になったかも・・。でも、なかなか面白かったような気もする作品。
「バッドサンタ」オモシロ感涙青春映画<ゴースト・ワールド>のテリー・ツワイゴフ監督作だったので期待しまくった作品。しかし金庫破りのサンタという設定の面白さを超える面白さとはならず惜しい作品に・・。ラストがハリウッド的予定調和なのが監督の今後を心配にさせる。がんばれツワイゴフ監督。
「レディー・ウェポン」香港製トンデモアクション映画の拾い物。女殺し屋バトルロイヤルというバカバカしく漫画的設定が効果を上げて最後まで一気に見せる。日本製ビデオシネマも是非お手本にしてほしい作品。
「ターミナル」近頃のスピルバーグ作品の中で最も安心して楽しめた作品。やっぱり主演のトム・ハンクスが良い。久しぶりに役者の演技力を堪能できた映画らしい映画。
「ジャッカス・ザ・ムービー」MTVチャンネルで放送されているスタントマンたちの命がけの悪ふざけコーナーをそのままパワーアップして映画化したモノ。ゴルフ場カート暴走ラリー。オフロード・タトゥー。店頭排便。大腸ミニカー。見覚ましドラム缶花火。etc.好きな人だけ見ればいい映画。私は楽しめました。
「ふたりにクギづけ」大好きなファレリー兄弟の最新作。結合性双生児を主人公にしたコメディー映画。これまで彼らが描いてきた笑いによって、全ての人が平等に暮らすことができると言うメッセージがより強く出された作品。主演ふたりがマット・デイモンとグレッグ・キニアという普通の役者が演じている為<愛しのローズ・マリー>や<メリーに首ったけ>のように爆発的な笑には結びつかないが、愛すべき映画となっている。

ということで第25回の心ぴくコーナーは「血と骨」です。近頃はずれが少ない崔洋一監督の最新作です。やはりこれも当たりでした。怪物映画の傑作です。
面白い怪物映画のルールは、
1、 怪物は、他の全ての登場人物から理解されない存在でなければならない。
2、 また理解されない行動をとらなければならない。
3、 唯一理解してくれる登場人物は消え去らなければならない(文字どおり消滅・死、または心が離れる)。
4、 また離れるような想像以上の行動をとらなければならない。
5、 怪物は自分のとった行動を反省してはならない。
6、 怪物は泣き言を言ってはならない。
といった感じです。
このルールを破ると怪物は理解できるものとなり怪物ではなくなってしまいます。
フランケン・ドラキュラ・狼男・エイリアン・ターミネーター・物体X・そして「羊たちの沈黙」のレクター博士まで、このルールにのっとった物だけが傑作たりえるのです。
まさに「血と骨」は怪物映画の傑作です。
北野武の怪演がバッチリはまり、家族も含め全ての人間は手を取り合って生きるものではなく、自分の欲望を満たすことのみに存在するとしか考えられない怪物をリアルに演じています。人知を超えた怪物は、恐怖と共に別の感覚を見ている観客に与えます。
それを与える映画は傑作です。
畏敬の念です。理解できない怪物は自然と同じです。どこで怒り狂うか分かりません。周りの人はなす術がないのです。そのなす術のない人々の運命を、全く被害の無いスクリーンの外から見る観客の行為は、まさに地獄のカンダタを天国の蓮の池から眺めるお釈迦様の神の視点なのです。
その視点で物事を見ると、なんと怪物=神の行動に憧れる自分がいることに気づくのです。
現実ではないのでいくらでも憧れられます。自由気ままに行動したい妄想、欲望を満たす為に法を犯してしまいたい妄想、誰でも持つ妄想です。その妄想を満たしてくれるヒーローが「血と骨」の主人公なのです。
だから泣き言など言いません。言ったとしても次の欲望を満たす布石でしかないのです。
癒しモノが流行するなか、人間の生きる根源のパワーを最後までぶれずに描いて見せた崔監督の傑作です。
2004年度、巻来功士的映画ベストテン入り確実の超お勧め作品です。
TOPへ


<「コラテラル」「エイプリルの七面鳥」
「オールド・ボーイ」「砂と霧の家」>

24回心ぴく 24回心ぴく
※画像をクリックするとイラスト表示

24回目の心ぴくです。
今月は、休みもないのに9本もがんばって映画を観てしまいました。でもがんばれば良い事はあるもので、9本中4本も大当たりでした。
今年の巻来功士ベスト10に入るのが確実な映画が4本とは映画フェチの私にとっては天国のような月でした。
観た映画は「エクソシスト ビギニング」「スクービー・ドウ2」「キャット・ウーマン」「sawソウ」「スウィングガールズ」「コラテラル」「エイプリルの七面鳥」「オールド・ボーイ」「砂と霧の家」です。

「エクソシスト ビギニング」は傑作「エクソシスト」の前日譚、途中はとても眠たかったが、クライマックスは悪魔的雰囲気でなかなか見せる。
「スクービー・ドウ2」はモンスターがたくさん出てくる楽しい作品。ファミリー映画。
「キャット・ウーマン」前作のキャット・ウーマンが出てくる「バットマン・リターンズ」の大ファンの私は正直がっかりした作品。セクシー系で売るか、オフビートなコメディ系で売るかハッキリしてほしかった。
「スウィングガールズ」なかなか楽しい作品。やはりテーマに音楽を使った映画は気持ちよく乗れる。ただし観ているときだけ。後には何も残らない。
「sawソウ」大好きな「セブン」と「キューブ」を合わせたような作品だと言う宣伝文句に乗せられて観に行った作品。期待が大きかったせいか、リアリティーの欠如ばかりが目に付いた。
と、この5本がそれなりの作品です。
では第24回心ぴく、4本の紹介です。

「コラテラル」
70年代アクション映画ファンの私にとってまさにプレゼント的映画でした。
正直、トム・クルーズの泣きの演技(「ラスト・サムライ」など)が苦手な私は、傑作「インサイダー」の監督マイケル・マンを信じてトム・クルーズは頭の中から消し去って、映画館に足を運びました。
コレが大正解。登場人物全てがいい。それぞれが自分の信じた行為により無残に死に、そして生きる。これこそハードボイルドな世界。善と悪などという単純なお子様ランチ的構図はどこにもない乾ききった男の世界でした。こういう雰囲気の映画を観たかったのです。
思えば70年代後半のお子様ランチ的アクション「ランボー」シリーズから男のアクション映画は消え去りファンタジーアクションばかりになってしまいました。
もう泣きは結構、黙って死に、運命を受け入れて生きる主人公の映画を観たい。
敬愛する監督サム・ペキンパー。ドン・シーゲル。ロバート・アルドリッチ。そして黒澤明。このマインドを持つ監督はマイケル・マンだけになったような気がします。
ジャズのメロディーと殺し、吹っ飛ぶタクシー、地下鉄の対決、どれも素晴らしい。
頑張れマイケル・マン。女子供や、ゴヨウ映画評論家などの時代遅れ、などと言う意見など無視して作りたい映画を作ってほしい。誰の支持も受けられなくても私だけは永遠に支持します。そのマインドに揺るぎがない限りは・・。頑張れマイケル・マン。

「エイプリルの七面鳥」
とにかく泣けました。物語は単純です。家族からロクデナシ扱いされて家を出たエイプリルという娘が、母親が癌で幾ばくもない命と知り、感謝祭の日に七面鳥の料理を食べさせようと仲たがいしていた家族全部を汚いアパートに招待しようとするお話です。
癌と聞いて、いかにも泣かせようと言う演出で、全編に悲しい音楽が流れて雰囲気を盛り上げているのだろうと、思う人もいるでしょうが全然違います。
全編乾いたタッチでドキュメント風の粗い画面で進行していきます。皮肉な笑いが散りばめられ、個々の人間の強さや脆さが浮き彫りにされていきます。
徐々に生身の人間の感情が表に出てくるのです。素晴らしい演出です。
ジョニー・デップ主演の傑作「ギルバート・グレイプ」の脚本家ピーター・ヘッジスの初監督作品です。
いかにも泣かせる音楽と、見え見えの演出が好きな人にはオススメできませんが、本当の人間を描いた人間喜劇を堪能したい人にはオススメです。
家族とそりが合わない娘と頑固な母、その両方に気を使う父、ボケていても言葉の端々で真理をつく祖母、いい加減だけど母に気を使う弟と真面目な妹。そして個性豊かなエイプリル
傑作です。気持ち良い涙を流したい人には絶対オススメの1本です。

「オールド・ボーイ」
とうとう出ました。韓国映画を越えた韓国映画が。
これまでの韓国は良い悪いは別にして、歴史と言う枠の中の良質な作品が多かったように思います。「JAS」「ブラザーフッド」「シルミド」「殺人の追憶」どれも傑作ですがどれも南北問題という歴史を抜きにしては、語れない映画です。
ところがとうとうそれとはまったく関係ない完全フィクションのエンターテイメント映画が完成してしまったのです。それまでは正直、韓国映画を見に行くということは韓国の歴史を勉強すると言う気持ちがどこかにあったというこということは事実です。
しかしこの映画は韓国映画という以上に娯楽映画なのです。理屈ぬきに面白いのです。
どこの国の映画なのかなど関係なくエンターテイメント映画なのです。1流の映画です。
骨太の演出でたるみがない。わざとらしい泣かせ演出などなく、ユーモアまで散りばめ衝撃のラストになだれ込んでゆく。重いラストなのに妙なさわやかさまで画面から滲み出している。上品さまで漂わせる傑作です。
これを日本の監督が演出したらどうだったろうと考えてみました。
過剰な暴力、主人公の独りよがりで延々と続く自己嫌悪の台詞もしくは行動、汚く大げさな血糊、などおそらく幼稚で汚いカルト映画を見せられたことでしょう。
大袈裟でなく、今日本にあれほどの大人の演出で娯楽映画を撮れる監督はいないと思います。制御を利かせた演出とカメラワークは大人にしか撮れません、「これでいいんだよ」と独り言が聞こえてきそうな日本の娯楽映画とはレベルが違うのです。
それほど面白い大人のエンターテイメント映画です。オススメです。

「砂と霧の家」
人間ドラマの傑作です。良い人悪い人を簡単に分けるなどいう単純な演出がなされていないところが近頃のハリウッド映画には無い風格を感じさせます。
登場人物それぞれの個性が手にとるように描かれていて、物語の全てに感情移入できるので、画面に起こる悲劇にまさに「心ぴく」となるのです。
物語は、役人の手違いで父の形見の家を奪われた女性と、その競売に出された家を手に入れた亡命イラン人一家が中心に展開されます。2組とも国というものに翻弄される人々です。
女性は役人に、そしてイラン人一家は母国とアメリカに。
イラン国内では裕福であったろう元秘密警察の大佐を演じているベン・キングスレーが「シンドラーのリスト」以上の最高の演技をします。
イランから持ってきた財産が残り少なくなったのを家族に知らせず、朝夕と肉体労働をして愛する息子の将来の学費を貯める父親を静かに熱演しています。
泥まみれになって働き、家族を住まわせている高級ホテルの部屋に帰るときはスーツに着替えるという誇り高いアラブ人の描き方は、まるで黙して語らなかった私の父親世代をほうふつとさせて身に詰まされます。
そのイラン人が市価の4割で手に入れた、間違いで売られた家を取り戻そうとする女性を演じているのが「レクイエム・フォー・ドリーム」の力演が光るジェニファー・コネリーです。夫と離婚し、家を取られた失意に中、親切な警察学校の教官と不倫に走りその家庭を不幸にしてしまう、強くてモロイ普通の女性を好演しています。
悪い人は誰も居ません。誰もが誰かの為に懸命に生き、しかし人間持つ弱さのために不幸になっていきます。ラストのベン・キングスレーの嘆きは全ての父親の嘆きといっても過言ではないくらい胸を打ちます。
しっかりした手ごたえの人間ドラマファンには超オススメの傑作です。
TOPへ


<「それなりの9本」

それなりの9本
※画像をクリックするとイラスト表示

今月はバンチを1回お休みしたせいで「ヴィレッジ」「バイオハザード アポカリプス」「アイ・ロボット」「ヘルボーイ」「モンスター」「僕はラジオ」「クライモリ」「インファナル・アフェア 無間序曲」「モーターサイクル・ダイアリーズ」と9本も映画を観ることが出来ました。
それなりにどの作品も面白かったように思います。

「ヴィレッジ」はご存知、M・ナイト・シャラマン監督の最新作。
今回も大どんでん返し物で、なかなか見せます。主演女優ブライス・ダラス・ハワードが良く、話としては、まるっきり<トワイライトゾーン>か<ウルトラQ>といった感じですが、両方とも好きだった私としては楽しめた作品です。

「バイオハザードU アポカリプス」は前作より面白かったように思います。
ジル役のシエナ・ギロリーがかっこよく、お気に入りの女優になりました。

「アイ・ロボット」は大好きな監督、アレックス・プロヤス(大傑作SF映画<ダーク・シティー>監督)の最新作で期待して観に行きましたが、なかなか健闘していて、最後のシーンなどはSFマインドに溢れていて感動しました。しかしなぜ、<心ぴく>しなかったのかというと、あきらかに主演のウィル・スミスがミスキャストだと思ったからです。本当に惜しい。

「ヘルボーイ」これこそまさに西洋版・妖怪大戦争。ナチスのゾンビ殺し屋がかっこよくてキモチワルイ。キャラは全部立っていましたが、最後が尻すぼみな感じでした。
2に期待。

「モンスター」女優版ロバート・デ・ニーロのようにシャーリーズ・セロンがブ女に変身して実録の連続殺人犯を演じる。なかなかいい作品ですが、元のセロンの顔がちらつき感情移入するのが難しかった。作り過ぎなくても素顔でやった方が良かったんじゃないかと思った作品。

「僕はラジオ」実話の映画化。エド・ハリスとデブラ・ウィンガーのファンだから観に行った作品。やはり二人が居たから観られた映画でした。

「クライモリ」アメリカン・スプラッター・ホラーの大道を行く作品。深南部の森、キャンパーの若者6人、人食い殺人鬼3兄弟。そう、その通りのストーリーが展開する映画。多くを期待しなければ、それなりに楽しめ(?)ます。

「インファナル・アフェア 無間序曲」前作「インファナル・アフェア」の続編。といっても数年前が舞台になっていて、運命が判っている人々を描いて、これほど濃密な世界を作り出すとは、傑作の部類に入るかと思います。
ただ、音楽だけはいただけません。もっと乾いた音楽をバックに流せば大傑作になったと思います。最終話も期待して見に行くつもりです。

「モーターサイクル・ダイアリーズ」アルゼンチンの革命家、チェ・ゲバラの青春時代を描いたロードムービーです。20代前半、医大生だったゲバラは、友達と二人で南米大陸縦断の旅に出ます。そこで出会う裕福な人や貧しい人、そして差別される病人。ゲバラは徐々に何かに目覚めていきます。と、こういう映画です。
大好きな<セントラル・ステーション>の監督が撮ったとは思えないような浅い作品になっていました。せっかくの題材が・・・。まるで深く斬り込むのを、わざと避けているように感じました。役者やカメラはすごく良いのに最後に流れる後日談の文章に最もインパクトがあるとは皮肉な作品です。

というわけで第23回目の<心ぴくコーナー>は「なし」です。いや、「それなりの9本」ということにします。
来月こそ、私の心を震わせる<心ぴく>映画が観られますように、、、。
TOPへ


<華氏911>

華氏911
※画像をクリックするとイラスト表示

第22回の心ぴくです。
今回は「マーダー・ライド・ショー」「華氏911」「誰も知らない」「ハイウェイマン」「ヴァン・ヘルシング」「父帰る」の6本を見ました。
惜しい映画のオンパレードでした。
「マーダー・ライド・ショー」はとってもイヤーな気分にしてくれるホラー映画。アメリカでは好評でパート2が作られるらしい。ホラーファンのMTV監督が撮っているらしく<悪魔のしたたり><悪魔のいけにえ2><ゾンビ伝説>などのパロディー満載で見せてくれるが、ラスト近くの蛇足的展開が惜しい作品。
「ハイウェイマン」は、あの傑作<ヒッチャー>の監督、久々の作品。
女性を轢き殺すことを生甲斐にするサイコな連続殺人犯と、妻を轢き殺され復讐の鬼と化し、何年も犯人を追い続ける主人公。設定は無茶苦茶面白そうだったのに、リアリズムが感じられず惜しい作品に。<ヒッチャー>のサスペンスのキレは今いずこ。
「父帰る」ロシア映画。12年間留守にしていた父親が12歳14歳くらいの2人の息子のもとへ突然帰って来て2人を旅に連れて行くロードムービー。父を慕う長男と反抗する次男。2人に男としての厳しさを教える父。この父はなぜ帰って来たのか?謎めいた仕事とは何なのか?そして重要なアイテムが・・・?最後まで目を離せない演出がすごい。
しかし、すべての謎が解き明かされないのはもっとすごい。こんなに観客のことを考えずに中途半端に終わる映画は久々に観ました。小気味いいぐらいです。
でもせめて、あの重要なアイテムの中身ぐらい教えてほしかった。
「誰も知らない」あのカンヌで主演男優賞を取った柳楽優弥君の映画です。
面白かった。子供達を自然に見せるためにドキュメントタッチで淡々と撮った演出が、乾いたタッチを画面から沸き立たせる効果になって、日本映画らしからぬセンスの良さを出せた映画だと思います。子供達のいつもと変らぬ後姿が泣かせます。
「ヴァン・ヘルシング」私の大好きなフランケン・狼男・ドラキュラ(怪物くん?)が出ているのにダークな雰囲気が出ていないのがまったく惜しい。怪物映画の傑作<グリード>の監督作なのにたたみかけるサスペンスフルなアクション演出が効いていなくてまったく惜しい。<ハムナプトラ2>の監督もやっているのにギャグがキレていないのが本当に惜しい。
という惜しいだらけ作品でした。

というわけで22回の心ぴくコーナーはまたまたマイケル・ムーアのドキュメント映画「華氏911」です。
完璧な反戦映画です。なぜ民主党のケリー候補までもがマイケル・ムーアの応援を拒否したか良く分かります。アメリカは良くも悪くも戦争を行うDNAを細胞に組み込まれた国家です。戦争無しに何も語れません。
だから良い戦争・悪い戦争とおかしな理由を付けて殺し合いを正当化するのです。民主党のケリーもその論理で今回の戦争はあまり正しくなさそうだ。と自信なさ気に言うだけです。戦争をやるアメリカにはまったく落ち度はなく、ただブッシュのやり方が間違っていると言っているだけなのです。
しかしマイケル・ムーアが言いたいことはまったく別だとこの「華氏911」や「ボーリング・フォー・コロンバイン」を見ればよくわかります。
彼は戦争を絶対悪だと言いたいのです。戦争をやること自体が悪だと。
いや戦争によって経済も上向くことがある。戦争によって国を守ることも大切だ。と思う人もいると思いますが、マイケル・ムーアは即座に反対することでしょう。
なぜなら彼の世界を見る視点にブレがないからです。
彼の視点はいつも貧しい人の側にいます。
戦争によって経済が上向く。・・・戦争によって豊かになるのは決まってその戦争を始めた資本家や大企業です。権力や腕力の無いものがその者達より先に豊かになった例はありません。日本が豊かになったと誤解されている人もいるようですが、アメリカのアジアにおける安全保障政策のおかげで奇跡的に豊かになっただけです。それにその前の太平洋戦争で最初に戦地に行き無残に死んでいったのは貧しい地方の人ばかりでした。
今回のイラク戦争でも全く変わりないことが取り上げられています。
最初に死ぬのは貧乏人ばかりだと・・・。一貫して貧しい者の視点に立つ
マイケル・ムーアが黙っているわけがありません。
だからムーアは断言します。戦争は悪だと。
国を守りたいというのは、国のシステムを守るということだと。
つまり、その国で豊かに暮らしている権力者、資本家、それにコバンザメのようにくっ付きおこぼれを頂戴する小金持ちのためのシステムを守るために行うことが戦争だと断言しているのです。
私は単純だから確かにそうだと思いました。
日本でもイラク戦争を支持している人の意見はアメリカについて行かなければ日本の経済がおかしくなるというものです。
しかしおそらく、簡単にそう言う人は、身内に自衛隊員はいないと思います。
少なくともアメリカについていき他人は死ぬかもしれないが自分達だけは豊かになる。そう思っている人が言う意見には間違いないと思います。
だってそうでしょう。命よりお金を取る馬鹿がいるわけはないのですから・・。
そんな偽りの正義が良く見える傑作です。
日本の政治家が良く言う、日本人は平和ボケだ。という言葉、確かにそうだと思います。政治家のそんな言葉に踊らされ、確信もないのに勝手に不安を増長させ、軍備を増やさなければ侵略されるなどと本気で思ってしまうのです。それよりも、冷静に相手をよく見て外交の力で問題を解決する事が最も重要だと理解する。そんな事実をしっかりと直視する勇気、それこそが平和ボケではない証拠だということを良く判らせてくれます。
だから国民を平和ボケだという言葉で不安にさせ、事実を直視できないもっと深刻な平和ボケにしておきたい政治家は、この映画を観もしないで偏った映画だから見に行かないと言うのでしょうね。
とにかく、資源もないこの日本という、戦争なんかに参加した時点で破滅の道を進むと断言できる国に住んでいる国民は、生き残る為に絶対に観ておかなければならない映画だと思います。是非見てください。
TOPへ


<スパイダーマン2>

スパイダーマン2
※画像をクリックするとイラスト表示

今月は、少し休みも取れて、たくさん映画を見ることが出来ました。
「スパイダーマン2」「69」「下妻物語」「リディック」「ウォルター少年と夏の休日」「サンダーバード」「マッハ」「アメリカン・スプレンダー」「シュレック2」「キング・アーサー」の10本です。
私が長崎県佐世保市出身ということもあって「69」は面白く見られました(少しひいきめに・・)。
「下妻物語」はなかなか面白い映画で正統派日本喜劇を久しぶりに見た感動がありました。
「リディック」は前作「ピッチブラック」の続編で、前作ファンの私にとっては面白い映画でした。
「ウォルター〜」は出演陣が名優ばかりで、騙されて足を運びましたが、リアルな演出とファンタジー部分が最後まで溶け合わず残念な映画となっていました。
「サンダーバード」は周りが悪評ばかりで覚悟して鑑賞したのですが、それが良かったのかどうか、気楽に楽しめました。わたし達おじさん世代は、思い入れが深いファンが多いので採点が辛くなるのでしょうか?わたしは、レディーペネロープの活躍で全て許しました。
「アメリカン・スプレンダー」こちらは期待しすぎたために肩透かしの印象が強かった作品。ドキュメント部分と役者が演じる部分が交互に映し出され、なかなかこった演出になっています。しかし私には、それだけという印象しかありませんでした。
「シュレック2」こちらは子供と見に行き思わぬ拾い物をした感じの映画になっていました。前作があまり面白い印象がなかっただけに、今回のハリウッドのパロディー部分は特に面白く感じられました。
「マッハ」これは理屈ぬきに面白い。もしも私が中学生だったら絶対に毎日ムエタイの型のまねをしていたことでしょう。それほど、オヤジの中に眠るガキ魂に火をつける傑作映画です。
「キング・アーサー」は、聖剣エクスカリバーと円卓の騎士の活躍を期待していた私には大はずれ。舞台が勝手にローマ時代に変えられ、アーサー王以下、登場人物全て薄汚く、敵の王はまるでギャングのボスのようでした。期待はずれの一本です。
というわけで今回の第21回目の記念すべき「心ぴく」コーナーは、念願のメジャー系映画を取り上げることが出来ました。
「スパイダーマン2」です。

「スパイダーマン2」は期待に胸躍らせて映画館に出向きました。やはり娯楽映画は作品に対する愛情が全てだと確信しました。
大人と証する観客にとってはどんな馬鹿げた映画であろうと、監督はそのテーマが好きじゃなければ観客の気持ちが分かるはずもなく、ツボをはずした失敗作になってしまうのです。この作品はその部分はまったく心配ありませんでした。
ピーター(スパイダーマン)=何をやってもダメなのび太くん、まるで私そのもの(もちろんスパイダーマンとしての活躍部分は除いて・・)。
Dr、オクトパス=悩みおおき天才科学者、悲しく強い。リストラされ逆切れしたおじさんに通じる所がある。サム・ライミ自作の傑作「ダークマン」を彷彿とさせます。
メリージェーン=心を決めたと思ったらすぐに移り気する。女の子の典型(?)
という具合に、しっかり誰もがどこかの登場人物に感情移入するように作られている。これはヒーロー映画としてはすごいことです。
普通、ヒーローのファンでもなんでもない職業監督が撮った場合、類型的な登場人物になるのがほとんどなのです。ヒーローは最初から理由もなく正義感を持っているし、きれいなヒロインはすぐにヒーローと恋仲になる。そして悪役はとにかく理由もなく悪い。
これでは、そのヒーロー物のファンでなければ面白いわけありません。だって感情移入出来る訳ないのですから。だからほとんどのヒーロー物はSFXやCGばかりが目立つ最新技術の品評会になってしまうのです。
その罠を免れたヒーローシリーズを私は二本しか知りません。
ティム・バートン版「バットマン1・2」とサム・ライミの「スパイダーマン1・2」だけです。ティム・バートンのバットマンは1.2だけで終わりましたが、スパイダーマンはまだまだ続きそうなので、今の所安心しています。あくまで監督がサム・ライミという条件つきですが・・・。
もしもサム・ライミがプロデューサーにでもなって他に監督を任せるようなことがあればこのシリーズはバットマンのように尻すぼみになるでしょう。それほど本来子供向けの題材を一般向けにするのは難しいことなのです。それだけでもこの映画は大傑作だと言えるのです。
TOPへ

ギャラリーフィギアアンケート作品・書籍作者紹介新作・新刊トップページへ