心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第20回 <スパン> 2004.07.18

第19回 <MAY メイ> 2004.06.15

第18回  <エレファント> 2004.05.14

心ぴく特別寄稿 2004.04.17

第17回  <ドッグヴィル> 2004.04.03

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第31回〜第35回

第26回〜第30回 第21回〜第25回 第13回〜第16回

第9回〜第12回 第5回〜第8回 第1回〜第4回

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<スパン>

スパン
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コミックバンチ連載のゴッドサイダー・セカンド14話目作画中の今日この頃です。
10回を越えたあたりから、流石に14年ぶりの週刊誌連載の疲れが出てきたのか、精神的、肉体的にピークに達しつつあるようです。
ストレスに負けないように暇があれば映画館に通い、別の人間の人生を疑似体験して、なんとかしのいでいる状態です。
というわけで、今月は、「デイ・アフター・トゥモロー」「シルミド」「ブラザーフッド」「スパン」「ワイルド・レンジ/最後の銃撃」「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の6本です。
なかなか面白い作品がそろいました。
この中で、全く期待していなかったのが「デイ・アフター〜」と「ハリポタ」でしたがそれなりの映画の「ハリポタ」は、吸魂鬼という魅力的(?)キャラクターのおかげで何とか最後まで見ることが出来ました。
「デイ・アフター〜」は、予想以上に面白かったです。(インデペンデンス・デイ)(ハリウッド版 ゴジラ)のエメリッヒ監督作品でこんな感想を抱くとは、我ながら驚きでした。経済的先進国の驕りと傲慢さがテーマとしてストレートに伝わってくる文明批判SF映画は久しぶりです。
「シルミド」「ブラザーフッド」は、ご存知韓国映画の力作。どちらとも面白い。泣きました。
「ワイルド・レンジ」は、久々の ケビン・コスナー監督・主演の西部劇。つい1月前にDVDでバート・ランカスター主演の西部劇「追跡者」を買って楽しんだ70年代ニューシネマ西部劇ファンの私としては、かなり期待したせいか、いろいろ不満はありますが(最後がだらだら長い)、それを差し引いても、観客を飽きさせない小技の効かせ方がなかなかうまく出来ていて、コスナーの西部劇大好きさが伝わってくる嬉しい作品でした。
そして第20回心ぴくコーナーに残ったのが、またまた小劇場系の映画「スパン」です。

20回目は誰でも知っているメジャー系映画を取り上げようと思ったのですが、これが1番面白いと思ったから仕方ないのです。「スパン」です。
麻薬の映画です。
しかし「トラフィック」のように麻薬問題を取り上げた社会派映画ではありません。麻薬の周りをうろつく、ダメ男、ダメ女達のたった3日間の物語です。
薬中の大学生、ドラッグストアの薬を使い麻薬を作り出すマッチョな中年男、その恋人のストリッパー、売人のカップル、薬中の刑事、などダメのオンパレード。
しかしBGMは最高にかっこよく、またマッチョな中年男役のミッキーローク(猫パンチ)が久々のはまり役で、ダメ男をかっこよく(?)演じています。
ムキムキマッチョなミッキーが、アダルトビデオ店でウンチクを垂れまくる所が特に私のお気に入りで、別の登場場面でも圧倒的な存在感でダメさを演じ(素かもしれない)、これからのミッキーの映画は全てチェックしようと心に決めたほどです。
他の登場人物も全て良く、いきいきとダメさを競い合っています。
特に出だしの画面に出てくる登場人物の名前が、80年代のロックアルバムのジャケットタイトルのようにデザインしてあり、そのカッコよさに最初からはまってしまいました。
ミッキーの恋人のストリッパーを、今売り出し中のブリタニー・マーフィーが演じていて、「8Mile」でエミネムの恋人役以上のハスッパな愛らしさで花を添えています。
とにかく私のツボにはまった映画です。とっても面白かったです。
東京・大阪以外の人で興味のある人は、もう少し待ってください。なにせ今これを書いている時点では、日本中でたった二館でしか上映されていません。近くに小劇場があればそのうち上映されると思いますが、なければレンタルが早いと思います。
次の心ぴくは、なるべく皆が何処でも見られるメジャー作品を紹介したいと思います。
次こそは・・・・なるべく・・・。
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<MAY メイ>

MAY メイ
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いやあ、週刊誌連載はしんどいですな。まあ充実したしんどさだから張りがある日々を送っているということになりますかな。
などと爺さん臭いことを書いてしまいましたが、どんなにしんどくても、映画は私にとって最高の趣味なので少しでも時間が空いたときには小まめに劇場に通っています。
しかしやはり今月は少なめで「ドーン・オブ・ザ・デッド」「ビッグフィッシュ」「MAY メイ」「トロイ」「21g」の5本です。
ブラピ人気でヒットしている「トロイ」以外は見るべきものがある映画がそろいました。
「トロイ」はブラピのブラピによるブラピファンの為の映画です。お好きな方どうぞ。
と言うことは、「ドーン〜」はゾンビファンの映画かな?走るゾンビが好きな方どうぞ。
「21g」はショーンペン。ベニチオ・デル・トロ。ナオミ・ワッツ。ものすごく濃い面々の演技が激突する力入りまくり映画。期待が高かった為に肩透かしの印象。しかしやはり。デルトロの演技はすごい。
「ビッグフィッシュ」は大好きなティム・バートンの力作。涙ぐんじゃいました。
ただし、これも期待しすぎていた為にどこか物足りなかった印象も・・。

ということで、第19回目の心ぴくコーナーは「MAY メイ」です。
簡単に言えばサイコホラー物と言うことになるのでしょうか。
ストーリーは、病的な母から貰った不気味な人形しか友達がいない、変わった女の子が主人公のお話です。その女の子は大人になり、変わった性格に磨きがかかっていきますが、ある男を好きになってから凄まじい悲劇が幕を開けます。
といっても、雰囲気はジメジメとはせず、からっとした雰囲気の中、ストーリーが進んで行くので、まるで青春映画のように感情移入でき、変わった主人公の行動が、自分自身の恥ずかしい青春時代の思い出と重なっていったりします。だから、後半の女の子の異常な行動にも納得がいき、最後の、ある意味純粋すぎる彼女の行動が、愛しくもなってくるのです。
最後の場面はかなり凄惨ですがそれと同時に、愛しさまで演出してしまう監督の力量に唸らされました。
明らかな低予算映画であり、出ている俳優も無名の新人ばかりです。しかし全ての俳優の存在感は確かです。この中から次世代を担う大スターが必ず出てくる。そう断言したいほどです。アンジェラ・べティス。ジェレミー・シスト。アンナ・ファシス。ジェームズ・デュバル。これらの名前を覚えておいて損はないと思います。
きっと、「ヘー、新人の頃あの大スターはこんな映画に出ていたんだ」などと言う会話が聞こえてきますから・・・。
そんな私の、青田買い的ファン心理も満足させてくれる映画でした。
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<エレファント>

エレファント
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第18回の「心ぴく」です。
いよいよ<ゴッドサイダー・セカンド>の作画が週間ペースとなり、余裕がなくなって来た今日この頃です。
一月半に7本も映画を観ることが出来る幸せな時期は今月限りかもしれません。
というわけで、今回は「エレファント」「殺人の追憶」「キルビルvol.2」「ロスト・イン・トランスレーション」「コールド・マウンテン」「スクール・オブ・ロック」「パッション」の7本です。
その中の5本の映画は、水準以上の出来で満足のいくものでした。
韓国映画の「殺人の追憶」は最後まで緊張感とユーモアで突き進みます。とにかく面白かった。
「キルビルvol.2」は、1作目のぶっ飛んだパワーは無いものの、タランティーノ本来のからみつくような場面転換や台詞を重視した抑えたアクションが楽しめました。 
「ロスト・イン・トランスレーション」はセレブなアメリカ人の日本滞在記、それ以上でもそれ以下でもない作品、この1本だけ少し水準以下。                「コールド・マウンテン」は正当戦争恋愛大河ロマン映画です。恋愛シーンより戦争シーンやサバイバルシーンなどの血なまぐさい演出が冴える一種の反戦映画にもなっていて、今だからお勧めの映画です。
「スクール・オブ・ロック」は私が大好きなコメディアン、ジャック・ブラック(愛しのローズマリー)主演の偽教師、名門小学校価値観破壊感動ロックコメディーです。懐かしのハードロックに唸らされ笑わせてくれます。
「パッション」はキリスト教信者がキリスト教徒のために作った宗教映画です
(感情移入が出来なかった為、ノーコメント)。

そして、今月の「心ぴく」は「エレファント」です。
どうして他の映画ではないのかと言うと、期待が高かったせいか、他の4本の映画は私の、心臓がぴくつくようなラストが用意されてなく、残念ながら、ハリウッド的予定調和の匂いがしたからなのです。つまりどの映画も想像したラストの通りで嬉しい裏切りがなかったと言うわけです。どの映画も素晴らしい映画に違いはないと思うのですが。
その予定調和が全然ない「エレファント」はズバリ、眠たい映画です。
ドキュメント映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」で取り上げられた、アメリカ・コロンバイン高校の生徒による同級生や先生を虐殺した事件を、まるで追体験させるように、ドキュメント風に撮った映画です。
最初から何の説明もなしにカメラが生徒の背中を追っていきます。そこで起こる取り止めのない会話、そしてまた別の生徒の背中から始まり、友達との会話やクラブ活動の様子を映しだしたりします。
この部分がとにかく眠たい。しかしガマンして見ていると、どの生徒の行動もある瞬間の一歩手前のシーンで終わっていることに気づかされます。
武装したいじめられっこ二人による虐殺の一歩前です。
ここから淡々と、しかしすさまじい殺戮を観客は目の当たりにすることになります。
BGMはありません。その静かな画面の中響くのは、銃の乾いた炸裂音と、普通の高校生が、呆然としている間に血にまみれ倒れてゆく姿。
まるで現場で見ているような錯覚にとらわれる臨場感と怖さ。これこそ暴力です。
正義とか悪とか言うものは存在しません。人は他人より強い力(暴力的な力・武器)を持つと行使したくなるものなのです。それが素人に近いティーンの俳優たちの、何も語らない、素直でリアルな演技を見ているとはっきりと分かります。
どんなに言い訳をしても、人間は相手よりも絶えず優位に立ちたく争っているのです。
それはただの会話でも同じ。その争いに武器が加われば殺し合いになるのです。
武器を持って平和を作り出すことなど出来る訳がありません。
行使できる力を持って来るだけで、力のない者にとっては脅威そのものなのです。
だから生きるためにパニックになります。生物として当たり前です。
そういう当たり前の、武器というものの存在の意味というものが分からされる映画です。
とにかく怖いです。
印象的に空が映し出されます。たしかに天から見ると、人間が起こす正義の為と偽っての戦争と、蟻の巣の縄張りを争っての戦いに何の違いがあるのでしょうか。戦う以上違いはないと断言できます。
では人間と蟻を区別する行為はあるのでしょうか?
あります。それは戦わないこと。なぜかというと、戦いを避ける為には唯一人間だけが持っている理性を使うしかないのですから。
せめて人間世界を続けようと思ったら、理性によってとことん考えてから行動に移す、その覚悟がなかったら、人間と言う名前を捨てた方がいいと思います。
この静かで恐ろしい映画を観てつい考えてしまったことです。
それほど私を思慮深くさせてくれた傑作です。
興味がある人は2・3ヶ月後ビデオショップを探してみてください。
寝不足の人は眠ってしまうかもしれませんが・・・。
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<心ぴく特別寄稿>

近頃世間を騒がせている事件で心臓がぴくぴくしたので、そのことを書かせてもらいます。
イラク人質事件のことです。
あまりにひどい政府の対応。それよりひどい約半数の日本国民の反応(報道機関のアンケートを信じればの話だが・・)。
この国がとても怖いことになりつつあると、皆さん感じないのでしょうか?
それほど鈍感になったのかと思うと悲しくなります。
何が自己責任なのでしょうか?
ボランティアの人々が命がけで戦争難民を救いに行き、フリージャーナリストが命がけで政府のひも付きジャーナリズムが報道できない戦争の真実を我々に知らせてくれる。
これを立派な行為と言うほかにどういう言葉があるというのでしょうか?
本当の民主主義の国(個々が自分の意思で考え、国民がより良い理想に向かって手を取り合いながら自由を勝ち取った国)なら彼らを非難する言葉など持たないはずです。
しかしなんと、この国では、恐ろしい言葉が平然と街のおじさん、おばさんから発されるのです。
自己責任というわけの分からない言葉が。
それが政府の側から発せられるのは、100歩譲って分るとしましょう。復興援助という美辞麗句の下、無理に無理を重ねた理由で、アメリカだけの為に、自衛隊を派遣した政府には、もしものことが起こり、その事の真実をフリージャーナリストに取材され公表されるのはいささか困る。ということは何となく分かります。
なんせ小泉首相はいまだもってイラクは紛争地帯ではないとおしゃっているのですから。
恐ろしいのは、こういう政府が言う自己責任という言葉を、約半数の国民が平然と口に出していることです。
あなた方は全て政府の関係者なのでしょうか?
汗水たらして働いた収入の中から税金を引かれ、それを知らぬ間にバカ高い道路建設や、使い道もない箱物を作るために使われている、そんな経験をしている一般大衆ではないのでしょうか?
真実を知りたくはないのでしょうか?
わたしは知りたいです。
しかし臆病なわたしはそれに命を賭ける事など出来ません。
だから真実を知る為にも絶対に彼らのような人々が必要なのです。
真実など知らなくていい、今が楽しければそれでいい。他のことなどうっとおしいと考えている人は別ですが、わたしは子供の将来を考えるととても不安なのです。
私には真実を命がけで伝えてくれる彼らのような人々が必要なのです。
彼らの行為ナシには、絶対により良い未来は来ない。
そう私は信じます。
そして皆さんにも必ず必要な人々だと信じています。
2004年4月17日
巻来 功士
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第17回 <ドッグヴィル>

ドッグヴィル
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今回は、10数年ぶりの週刊誌連載開始が近づき、かなり忙しくなってきたので観た映画の数が激減した中から選びました。
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」「ドッグヴィル」「レジェンド・オブ・メキシコ」「テキサス・チェーンソー」今月観られたのはたったの4本。
しかし、その中に三時間あまりに及ぶ大傑作がありました。
アカデミー賞総なめの作品ではありません。

というわけで、第17回「心ぴく」コーナーは「ドッグヴィル」です。
まさに傑作中の傑作と言っても過言ではありません。
監督はラース・フォン・トリアー。業界系評論家の間では、カリスマ的な人気がある「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のあの監督です。
正直言って、その映画に関しては皆さんが大絶賛するほど感動も興奮もしませんでした。ただの悲劇の品評会のような印象しかなかったのです。
だから、「ドッグヴィル」もぜんぜん期待せずに観に行きました。
ただ興味があったのは、セットを作らず床にチョークで書いたような街の中でアメリカの名優達がどういう演技をするのか、そしてどれだけ眠気と闘えるかということでした。
しかし予想は裏切られ、最初は少し見ていて戸惑ったものの、ほとんど3時間、画面に目が釘付けの状態になりました。
セットをなくしたのは、芸術家を気取る監督のパフォーマンスかと思いましたが、強烈な意味があることに中盤から後半にかけて気づかされました。(二コール・キッドマンが農夫に****ている時、他の家では普通の家庭生活が営まれているところを一緒の画面で見せる演出がすごい!)
セットの家が無いということは、人間の表面上を取りつくろう顔(=壁)を剥ぎ、本性があらわになることを意味していたのです。
その過程を演じる俳優達がとにかく素晴らしい!前回、デカ鼻をつけてアカデミー主演女優賞を取ったニコール・キッドマンが素顔で何倍も素晴らしい演技をしていました。
まさに女性の美しさ、可愛らしさを前面に出してもなお、嫌味を全く感じさせない演出は近頃出色の出来であり、今のところ私的にはナンバーワンの女優になってしまったほどです。
これほど人間の業を前面に出し、説教くさくならず、楽しめた(?)映画はそうはありません。
ラストでは、観ている観客の業さえもあらわになってしまうのです。
嫌なラストと感じるか、スカッとするかは実は表面的なもので、どう感じたにしろもう一度この映画の事を考えた時、その奥に表面上の気持ちとは裏腹な気持ちを持つ自分さえも見えてしまう、それほど怖く深く面白い映画だと思います。
「ミッシング・リバー」と並ぶ大傑作だと思いますが、私の中では「ドッグヴィル」の方が鼻の差で重要な映画になったようです。
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