心ぴくコーナー

このコーナーは、私(巻来功士)が、今月見た映画の中で、心臓がピクピクするほど感動及び興奮、または憤慨?した作品を紹介するコーナーです。

第16回 <2003年度 巻来功士的映画ベストテン><息子のまなざし> 2004.03.01

第15回  <ミスティック・リバー><25時> 2004.01.31

第14回 <ルールズ・オブ・アトラクション> 2003.12.30

第13回  <キルビル> 2003.11.24

第41回〜第45回 第36回〜第40回 第31回〜第35回

第26回〜第30回 第21回〜第25回 第17回〜第20回

第9回〜第12回 第5回〜第8回 第1回〜第4回

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第16回 <2003年度 巻来功士的映画ベスト10>

<息子のまなざし>

2003ベスト10 息子のまなざし
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巻来功士2003年度映画ベスト10
第1位「キル・ビル」
やっぱはずせなかったぜ。第13回「心ぴく」コーナー掲載
第2位「リベリオン」
第6回「心ぴく」コーナー掲載
第3位「ボーリング・フォー・コロンバイン」
第4回「心ぴく」コーナー掲載
第4位「戦場のフォトグラファー」
戦場写真家、ジェームズ・ナクトウェイのドキュメント映画。これぞ戦場。
第5位「人生は、時々晴れ」
イギリス映画。下層階級の庶民の来悲劇が愛情深く(?)描かれている。父親の姿が身にしみる
第6位「スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする」
第6回「心ぴく」コーナー掲載
第7位「8Mile」
第8回「心ぴく」文中に掲載
第8位「アバウト・シュミット」
第8回「心ぴく」文中に掲載
第9位「ムーンライト・マイル」
思い出すごとに優しい気持ちにさせる映画。やっぱり、ダスティン・ホフマンは良い人役が一番似合う
第10位「007/ダイ・アナザー・デイ」
やっぱり荒唐無稽アクション映画の傑作だ。

ということになりました。
4・5・9・10位は思い出すごとに私の中で評価が上がっていった作品です。
ほとんどが、2〜5月・あとは秋に公開された作品で、正月映画、夏休み映画に、いかに私の好みの映画が公開されないかが分かります。今年もすでにそんな感じですが、「心ぴく」映画が多く公開されることを期待します。

今月は封切館で7本の映画を観ました(「心ぴく」に書いている映画は全てがそうで、ビデオで観た映画は除いています)。「ギャンブル・プレイ」は好きな俳優、監督、ニック・ノルティー主演、ニール・ジョーダン監督の一風変わったギャンブラーモノで小品だが味わい深い映画でした。「リクルート」「コンフィデンシャル」は腰砕けの印象の作品。「シービスケット」は、エンターテイメントの大道をゆく感動作で今回の「心ぴく」で紹介しようと思っていた作品です。「ニューオリンズ・トライアングル」も娯楽作としては、最後まで楽しめました。「みんなのうた」はドキュメント風、フォークソングコメディー、シニカルな笑いが好きな人にはお勧めです。

というわけで第16回の「心ぴく」コーナーは、心臓にぐさっと来た「息子のまなざし」を紹介します。
ベルギー・フランス合作映画です。いわゆる単館系映画というヤツでエンターテイメント映画と思って見に行ったらおおまちがいです。
寝不足は厳禁の映画です。かならず最初の方は眠くなります。
BGMはまったく使われていません。手持ちカメラ1つの画面で物語は進んで行きます。
まるでナレーションのないドキュメンタリーのようです。
これに耐えきれないと思う人は、見るのをやめたほうがいいかもしれません。
私も最初は、演技か生か分からないようなリアルな演出と、名も知れぬ役者、坦々過ぎるような画面、こりゃあただの芸術系映画マニアのお好みの作品だなと高をくくっていました。前売り券代1400円がもったいないから最後まで見てやるか、などと不遜な態度を決め込もうと思っていると、
見事にジャン&リュック監督の術中にはまってしまっていました。
前半、いや全てを包む坦々としてリアルな演出あればこそ、ラストがきいてくるのです。
目が放せないほど心臓バクバクになるのを保障します。
ただし坦々さを我慢できればの話ですが。
ストーリーは単純です。
職業訓練校の大工講師の教室に16歳の少年が入ってきます。偶然にもその子は、5年前に赤ん坊だった講師の子供を殺し、鑑別居に入っていた犯人だったのです。
と言う内容です。それ以上でも、以下でもありません。
とにかくリアルです。子供を持つ親なら、なおさらラストのバクバク感がすごいと思います。
私が、映画を傑作かそうでないかを見分ける勝手な方法は、見た後ついつい物語を思い出してしまい、時間が経つほどに画面が鮮明に思い出される。これを傑作の基準にしています。
この映画は傑作です。ぜひ最後までご覧下さい。
途中でやめそうな人は、見ない方がいいですよ。ホント。
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第15回 <ミスティック・リバー><25時>

キルビル キルビル
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今月は、前回に引き続きお正月映画全盛と言うこともあり、なかなか心に響きそうな作品が見出せず見た本数は少なかったのですが、今月の後半に見た映画の中にかなりの傑作があり、お正月映画のフラストレーションを一気に払拭してくれました。
今月観た映画は「ファインディング・ニモ」「女はみんな生きている」「ドラキュリア2」「タイムライン」「ミスティック・リバー」「25時」の6本です。
では第15回の「心ぴく」コーナーは、まぎれもない傑作「ミスティック・リバー」「25時」の2本を紹介します。(はっきりしたオチは書いていませんが映画を見慣れた人は、見終わってから読んだ方が良いかもしれません。)

「ミスティック・リバー」はおそらくこの2・3年に1本の傑作だろうと私は思います。
ミステリーの形を借りて男たちの友情と悲劇を描いた感動作。宣伝のキャッチコピーにはおそらくこれと似たような文句が踊っていると思いますが、感動=泣けると思って観たら大間違いです。

監督はあのクリント・イーストウッドです。彼が今まで作ってきた映画にそんな単純な映画があったでしょうか。初監督の「恐怖のメロディー」から私の大好きな「アウトロー」そして「許されざる者」まで、スカッとするアクションモノも感涙に咽ぶ作品もありません。あの「ダーティーハリー」シリーズも同様で、どちらかといえばドヨンと空気が澱んだようなラストを迎えるものがほとんどです。
あまりイーストウッド作品を見たことがない人は、ただのアクション作を作り、出演していた俳優が突然、こんなに救いがなく真っ暗な、しかしものすごい人間ドラマをつくってしまったことに困惑するかもしれません。まさにこの映画は〜系の映画だとあらかじめ思って見に来た観客を思い切り戸惑わせるものになっています。
最初は主人公3人の子供時代の不幸なエピソードから始まります。
そして30代半ばになった3人のうちのひとり、ジミー(ショーン・ペン)の愛する娘が殺害されたことで、3人は再会します。
娘を溺愛していた故、激しく嘆き悲しむジミー。
それをなぐさめる、心に傷を負った幼友達デイブ(ティム・ロビンス)、
その事件を捜査する為に故郷の街に帰ってきた幼友達の刑事ショーン(ケビン・ベーコン)。
不幸なジミー、精神を病んでいる為に、観客にとっては少し怪しいデイブ、そしてこの難事件を解決する敏腕刑事ショーン、さあ後は犯人探しをじっくり楽しめばいい。そう思って見ているとアレアレと首を傾げる展開になって行きます。
とくに不幸なジミーの印象が変わってきます。娘を殺された事にはまちがいないのですが、不幸=可哀想ではなくなってくるのです。ここからの展開が唸らされます。犯人探しはさして重要ではなくなり、3人の個人的な謎に焦点が当てられてくるのです。謎=少年時代に受けた傷を背負い今まで生きてきた人生に。
そして後半、その不幸な人生と殺人事件という悲劇が結びつき胸震えるラストへとなだれ込みます。
まったく、素晴らしい、の一言に尽きる演出です。
そしてその上素晴らしいのは、これまでのイーストウッド映画のラストを突き抜けてしっかりと答えを出している所です。これまでならば、おそらくラストは、主人公たちが幼き日のデイブが連れ去られてゆく幻を見るシーンで終わると思うのですが・・。しかし今度のイーストウッドは空気が淀んだような終わり方をせず、真正面からこれからの主人公たちの生き様を映し出して終わるのです。決然とした意志をも映し出して。
私が大傑作と思う理由はそこにあります。ただのトラウマミステリーがラスト、あの名作「ゴッドファーザー」の輝きを発するのです。
ジミー(ショーン・ペン)のサングラスをかけるシーンには心底震えました。まるで「ゴッドファーザー」のラストのマイケル(アル・パチーノ)の表情を見たときと同じような感動を覚えたのです。
とにかく、これぞ本物の「心ぴく」映画といっても過言ではない超お薦めの一本です。

「25時」は黒人監督スパイク・リーの作品です。
そしておそらく初めての白人が主人公の映画だと思います。
この作品も友情を描いていますが、「ミスティック・リバー」とはちがい、今を生きる青春時代の友情の物語です。青春とは後悔の連続、そんな映画です。これにはまだ若い国アメリカの後悔も描き出されます。
9・11グランド・ゼロを見下ろしながらの場面、ビンラディンの映像、そして、麻薬売買の罪で数時間後に収監される主人公モンティー(エドワード・ノートン)が鏡に向かって毒ずくシーン。アメリカで生活するあらゆる人種の映像が流れ、それを罵り、しかし自分が最もバカだと最後に呟くモンティー、このシーンには泣かされました。
7年間もお釜を掘られるかもしれない監獄にいなければならないのです。その恐怖と後悔の感情が見ているこちらにもズンズン迫ってきます。
友達も後悔しています。なぜ麻薬の売買をやめさせられなかったのかと。
後半のその友達とのエピソードがまるでベタな青春映画のように展開されます。
しかしそのベタな演出が後悔の感情とマッチして意外なほどの感動を呼び起こします。これは私にとっても新鮮な感動でした。そして父の車の中から眺めるニューヨークの街並みと街行く色々な人種の人々、黒人の少年、見ていて目頭が熱くなるシーンです。そして父の言葉、幸福な幻想。この詩的映像がいつまでも心に染み付いてはなれない。そんな映画です。
誰もが必ず持っている後悔の感情それを刺激する傑作です。
とくに後悔することばかりの私には心がぴくぴくした映画でした。
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第14回 <ルールズ・オブ・アトラクション>

ルールズ・オブ・アトラクション
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第14回目の「心ぴく」です。
先月の「キル・ビル」に、脳天直撃された後遺症なのかどうか、今月観た映画はぼうっとした印象で、あまり乗れない映画が多かったように思います。
「アイディンティティー」「フレディーVSジェイソン」「マトリックス・レボリューションズ」「フォーンブース」「ラスト・サムライ」「ルールズ・オブ・アトラクション」「アンダーワールド」「ポロック/2人だけのアトリエ」「デッドロック」、と見せ場はあるのですが全体としては・・・という映画が大半でした。
それでもそんな映画は途中飽きさせなくてまだいいのですが、出演者や映画会社や業界までが青筋立てて頑張っているだけの、笑っていいのか泣いていいのか分からないお祭り大珍作「ラスト・サムライ」には参りました。途中で飽きちゃいました。
日本人が頑張っているからといって、いい映画になるのだったら日本映画は傑作ばかりになってしまいます。でもそんな日本映画を観ていなくてこの作品を手放しで褒めている人は、やはりアメリカ映画に出ている日本人ということで褒めているのでしょうか?そんなにアメリカもアメリカ映画も偉くはないと思うのですが・・・やはりアメリカの一部の映画マスコミに日本の俳優が持ち上げられるとわが事のようにうれしい気持ちは私も同感ですが、その事と映画の出来不出来は全く別物と思うのですがどうでしょうか?
・・というわけで、前置きが長くなりましたが今月の「心ぴく」は「ルールズ・オブ・アトラクション」です。
アメリカの大学生のバカ騒ぎをシニカルな目線で描いた群像劇です。
かなり下品です。映画に愛と夢と涙とカタルシス、そういうものだけを求める人にはお薦め出来ません。
しかしリアルです。「ああ、若い頃はこんなものだった」と誰でも思えるようなエピソードの積み重ねで出来ています。アメリカでも日本でも20歳前後の若者が考えることはだいたい同じです。学歴や偏差値なんか全然関係ありません。ほとんど下半身に脳味噌があるようなものです。あなたもそうだったでしょう?
そんな懐かしく少し気恥ずかしいあの頃の気分を味わいたかったら見て損はないと思います。ただし何度も言うようですが、セピア色の暖かい映画ではありませんからご用心を。
なにせ原作はアメリカのエリートの狂気をハードなバイオレンスシーンのオンパレードで描いた問題作「アメリカンサイコ」やセレブな若者の無軌道な生き方を描いた「レス・ザン・ゼロ」の作家ブレッド・イーストン・エリスなのですから。
そんな原作に負けないほど、男女問わず若い役者の面構えが良い生き生きとした作品でもあります。そんな表情を引き出すロジャー・エイバリー監督(あの「パルプ・フィクション」の脚本家でもある)の手腕は並大抵のものではないと思います。
とにかく次回作も期待大です。
興味のある人は、小劇場系の映画館を探すか、3,4ヵ月後レンタルビデオ店で探すのが近道だと思います。とくにトッド・ソロンズ。ポール・トーマス・アンダーソン。両監督の作品が好きな方にはお薦めの一本です。
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第13回 <キルビル>

キルビル キルビル
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第13回目、祝1年目の「心ぴく」だぜ。ヤッホー、おいらマッキーだ。
今回は、とにかくぶっ飛んだ映画を紹介するぜ。
KILL BILL  Vol.1」だ。
超話題作ってやつだ。みんなもう見たよな。ナニ見てない?
そんな奴らはほっといてバンバン「心ぴく」った所を書いていくんで、まだ見てねえ奴は読まねえほうがいいかもな。
タランティーノ兄貴がやってくれたぜ。ハードバイオレンス・アクションコメディーの金字塔だ。
出だしは、70年代アメリカンバイオレンスアクションだ。どたまぶち抜かれるユマの表情が、まず俺の心を「心ぴく」ったぜ。凄絶美とでも言うのかな。それから一気に女殺し屋の家にお礼参り、無駄なカットは無しで突き進むバイオレンス。ユマが女殺し屋の娘にいう言葉、俺はニヤッとしたね。クールな70年代東映映画の台詞だと思ったね。
次は病院脱出のシーン、変態看護士のクソ頭をド突きまくるユマ、車の中で一人リハビリをやるユマ、そのリアルでシツコイ演出、いいねえ。
出演人も俺のお気に入りばかりというのもシビレル理由だ。
「パルプフィクション」の薬チュウ情婦のユマ・サーマンはもちろん
「レザボアドッグス」の狂犬マイケル・マドセン兄い
僕がとっても大好きな人魚と青年の恋物語「スプラッシュ」の人魚役、ダリル・ハンナちゃん(つっても今何歳だ?)。
どリアル傑作西部劇「ロングライダース」の御大デビッド・キャラダイン。
「ペイバック」のSM好き、女チャイニーズマフィア役のルーシー・リュー。
特にルーシーは良かったね。Vol.1はルーシーの映画だと言ってもいいほど光ってたぜ。
でも俺はルーシーの後ろにもっと光り輝く女神を見たんだ。それは
梶 芽衣子嬢の姿だったんだ。
あの初代「女囚さそり」そして大スプラッタ復讐映画「修羅雪姫」の70年代の東映映画の女神だ。タランティーノの演出がルーシーをまさに梶姐御に変えてたね。
飛び散る手足、吹き出る血シブキ、タランティーノ兄貴がハリウッドの映画規制に喧嘩を売っているのが痛快で画面の面白さが2倍になったぜ。日本勢ではギャーギャー逃げまくる、我が青春の風祭ゆき嬢、それに女子高校生殺し屋ゴーゴー夕張役の栗山千明嬢がとっても良かったね。あの鉄球を振り回す腰つきと腹が座った面構え、一発でファンになっちまったぜ。
とにかく70年代に生きる妄想オヤジにはこたえられねえ贈り物だ。
ありがとうタランティーノ兄貴。
梶 芽衣子姐御の歌には本当に泣けたぜ。
ありがとよ。
Vol.2期待してるぜ兄貴。
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